20話 山賊の村おこし

ブログバージョン

http://suliruku.blogspot.jp/2016/10/20.html

僕が統治する村の東に――人間の村が一つだけあった。

獣道を使わないと到達できないような、そんな閉鎖的な場所に位置している。

……商人が来ないから、とっても貧乏そうだなぁ……という村な訳だ。

人間社会は不思議なもので、貨幣がないと農作物の生産力も激減する傾向にある。

だって野菜は高く売れる場所に運搬する前に腐るし、道が整備されてないから移動するのも一苦労だ。

獣人の村に持っていても、僕達はほら、貧乏だから金持ってないし。

こんな所に好んで住む人間は、かなり訳ありだろう。

一応、焼き払う予定の村なのだが――気になった僕は、交信術で邪神達の視界を借りて、村の集会場を覗いてみた。


『汚物は消毒よー』

『焼き払えー、犬さんー』

『放火はよ』




~~~~~~~~~

村の中心に位置する集会場。老朽化が進み、木の床が腐っている。

あんまり広くはなく、二十人が輪になれば、それで精一杯だ。


「過疎って大変じゃのう……このままじゃ、村は廃村じゃよ……

最近の若者は、都会を目指して酷いのう……」


この悲しい発言をしたのは、村長らしき白髪の老人だ。

他の村人と同じく、痩せている姿を見るに、富を平等に分配する良い長なのだろう。

村人たちが、積極的に意見を出してくるところが、活気があって良い。


「最近、流行の村おこしをやれば良いと思うべ」


「そうじゃなぁ……観光客でも呼んで奴隷……じゃなかった。お金を落として貰えるとええのう……。

じゃがどうやって集めるんじゃ?

ワシらの村の特徴的な産業ってアレじゃろ?」


「俺達の得意な仕事といえば……山道を歩く旅人や商人を襲って、人身売買だべ?

その特徴を伸ばせばいいんだべよ」


……前言撤回。この村は良い村ではない

治安を保つために、焼き払った方が良い村である。


「そうじゃな……獣娘を捕まえるのはどうじゃろ?

領主様が死んだという噂を聞いたから、今なら襲える気がするぞい。

獣人はどの年齢でも、コレクターに高く売れてウハウハじゃな?」


「さすがは頭……じゃなくて村長。

頭が良いべ」


「しかし、これじゃと獣人の村を一回略奪したら対策されて、仕事はおしまいじゃなぁ……産業にはならんのう」


「獣娘は事故がなければ1万年は生きると聞いた事があるべ?

なら、俺達で……ぐへへへへ、たくさんスケベーして養殖して、去勢した男の獣人だけ売れば、産業を独占できて大儲けできて美味しそうだべ!」


「ふぉふぉふぉ、それは良いのう。

なら、ワシらがやったと気づかれないように、一度に大量の獣娘を捕まえれば完璧じゃな?」


この村長の発言に、村人たちの目が希望で輝いた。

まるで新大陸に移住する前のゴロツキどものような風景である。

次々と立ち上がって、明るい明日への希望を叫んだ。一部は腐った床を踏み抜いて、盛大に負傷している。


「野郎どもー!今日から毎日のように獣娘とスケベー三昧だべぇー!」

「「やったー!やる気がでてきたべぇー!」」

「子供を人質に獣娘も労働させれば、一生、働かずに済みますぜー!」


山賊達は不味そうな酒を飲み、ワンパターンすぎる発言の数々をして、昼間から幸せそうに酔っぱらっていた。


「ふぉふぉ……これで村は発展するのう……。

いや、街に発展して、ワシは未来の市長かもしれんな?」



……この後、人間の村……いや、山賊の村が包囲殲滅陣されて、家屋は全て焼き払われて、井戸に村長の遺体が放り込まれたのは言うまでもない……。

でも、どうやって生存するつもりだったんだろう、この山賊の村。

邪神の広い視点で周りの地形と集落を見ると――

       ゴブリン

    ゴブリン      ゴブリン

獣       山賊の村    ゴブリン

    ゴブリン

          ゴブリン

   ゴブリン  



見事に、周りにあったはずの人間の村が、難民ゴブリンに占領され、人間達は食肉として処理されて、備蓄倉庫に並んでいる末期的な状況だから、村興し以前の問題だと思う……。



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(´・ω・`)すでに詰んでいた。ワシらの人生


(ノ゜ω゜)(ノ゜ω゜)この山賊の長!明らかに先生が元ネタでしょー!?


(´・ω・`)ワシも尻尾をモフモフする人生が欲しいのう……


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