マナドール・マスターの苦悩(300字SS)

 電書魔術人形師(マナドール・マスター)は苦悩する。


 *


 人形師の朝は早い。

 朝日と共に目を覚まし、筋トレをこなし沐浴を経て初めて人形と向き合った。敬虔さと真摯さがその姿に垣間見える。

 命よ宿れ。

 くたりと垂れる人形を取り、マーカーを埋めていく。


 各関節に丁寧に。顔の各所へ倦むことなく。

 作業は三〇カ所にも及ぶという。


「マーカーは目印だ」

 魔術書を起動しタップする。身体だけの人形がくるりと回ってお辞儀する。

 人のように人を超えて、天使の如く。

 その繊細な表情も。

「目印があるから魔術書は安価で、MANAも少ない」

 子供の友のあるべき姿と。


 しかし。

 師は表情を曇らせる。


「子供に泣かれる」

 芸術品と称される人形を眺め苦悩する。

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