夢の果て(300字SS)

 謝れ。生産者に謝れ。愛好家に謝れ。

 ヤツはニコニコ笑っている。私は必死で言葉を呑み込む。

「コレなら飲めるでしょう?」

 タブレットの画面が輝く。電書魔術がMANAへ伝わる。

 悪気の欠片もない凶悪な笑顔が、私へグラスを示してみせる。

「もうアルコールは無いと思うよ?」


 アルコールは酵素によってアセトアルデヒドへと変化する。

 アセトアルデヒドはさらに分解されて無害になるが、分解酵素を持たない人も一定数存在する。


 耐えろ。諭せ。二度と間違いを起こさぬように。

 例えそれが、高級ワインという過去を持っていたとしても。

「いいか」

 飲んでみたいと言ったことだけは間違いない、のだ。

「酒を分解したら、それは」


 上等なビネガーが香る。

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