愛した話

丹桂

同性愛と樹木性愛

第1話





目の前を、桜の花びらが舞っては落ちていった。



…もう、そんな季節か。



去年の春。

俺は、好きな人の好きなものを殺した。

その時の彼の顔は、今でも忘れない。


真っ黒になった瞳。

僅かに開いた口からは、何の音も聞こえない。

真っ直ぐと、俺の手元を見る。

…俺のことは、ちっとも見てくれなかった。






――あ、泣く。





そう感じた瞬間、ぽたっと落ちる涙。

大好きな彼は、声も無く泣いた。

泣かせてしまった。

初めて、泣くのを見た。


俺じゃない、愛した物の為に泣いたんだ。



「結城…」



思わず俺は、彼の名前を呼んだ。

揺れる瞳。

あ。やっと俺を、見てくれた。



「…死んでしまえよ」


「……っ…!」



酷く小さく震えた声。

だけど、その声色は赤と黒。


怒りと憎しみだった。



「お前なんか、親友でも何でも無い」


「…ま、待って…。結し…」


「俺の名前を、二度と呼ぶな。俺に…二度と関わるな」






それが、俺と愛する人との最後の会話だった。






あれから、もう一年経ったのか。


相変わらず俺は、結城が好きだ。

彼のことは、二年前から好きだった。

入学式で結城を見かけた時に俺は、人生初の一目惚れというものを、体験する。


運良く同じクラスだった俺ら。

俺は結城に話しかけ、徐々に仲良くなっていった。

そうした努力のお陰で、親友という位置を手に入れた時。

結城は、残酷な言葉を呟く。





「…俺さ、木が好きなんだ」



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