第15話 『一寸法師』をリメイクしてみた

「熱い展開っていいわよね」

「突然どうした」


 また何かくだらないことを考え付いたな。


「ほら、主人公がピンチの時に仲間が助けに来る展開よ」

「ヒーロー物では定番だな」

「そういう要素を加えたリメイクをしたいと思うの」


 だがそれは博打だ。

 余計なキャラを加えた結果、駄作になったリメイク映画は山のようにある。

 さらに言えばこいつはごんぎつねに兄弟を加えて泣ける作品をパニックホラーにした前歴がある。


「で、何をリメイクする気だ」

「一寸法師」


 俺の記憶が確かなら、こいつに仲間はいないはずだが。


「一寸法師のピンチと言えば鬼に飲まれるシーンだが……」

「そうそう。そこに仲間が駆け付けるの」


 一寸法師の仲間って……一体どうする気だ。


「一寸法師が鬼に立ち向かう。そして食われる……」

「娘さんに襲い掛かろうとしたその時!」


 普通なら一寸法師が腹の中で反撃に出る。


「『待てーい!』『だ、誰だ!?』『一寸法師とお姫様を離してもらうぜ!』」

「王道の登場シーンだな」

「『何度倒れても蘇る……』」


 カーン!カーン!(効果音)


「『起き上がり小法師こぼし!』」

「ちょっと待て」


 どう言うチョイスだ。


「仲間は何かしら共通点があるのがセオリーだから」

「法師つながりかよ!?」


 しかも名乗りの際の効果音付きだ。


「あ、ちなみに一人じゃないわよ」

「何だと?」

「『光ある所に影有り……』」


 カーン!カーン!(効果音)


「『影法師!』」

「実体ねえだろうが!」


 ただの影じゃねえか。


「『魂の読経シャウトを聞きな』」


 カーン!カーン!(効果音)


「『琵琶法師!』」

「耳なし芳一じゃねえか!」


 リメイク作品から呼ぶな。


「『東アジアは俺の庭……』」


 カーン!カーン!(効果音)


「『ツクツクボウシ!』」

「セミじゃねえか!?」


 苦しすぎるわ!


「『痛てっ!? 痛ててて!』『一寸法師がお腹の中で暴れまわったので、鬼は慌てて吐き出しました』」

「ここで何故出て来る!?」

「『そして、遂に五人の法師がそろいました』」


 まさかこの流れは。


「『五人そろって!』」


 カーン!カーン!(効果音)


「『五法師!(御奉仕)』」

「ダジャレかよ!?」

「『都を騒がす不埒な鬼よ!』『今こそ俺たちが倒してやる』『ツクツクホーシ』」

「セミ黙れ」


 何だこのメンバー。

 約三センチの人間と民芸品と影と琵琶法師(盲目)とセミでどうやって勝つ気だ。


「『た、たすけてくれー!』『鬼は泣きながら逃げ出してしまいました』」

「何で勝てる!?」

「『鬼が行ってしまった後に不思議なものが落ちていました』『まあ、これは打ち出の小づち。何でも願いがかなうのよ』」


 そう言えば姫を忘れてた。


「『大きくなーれー、大きくなーれー』『すると、一寸法師の背がぐんぐん伸びて、立派な男の人になりました』」

「ハッピーエンドだな」

「『ツクツクボウシも一緒に大きくなりました』」

「キモいわ!」

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