第2話 『ごんぎつね』をリメイクしてみた

「ではまず、『ごんぎつね』なんてどうかしら?」


 悪くない。

 元々あの話は授業でも使われるくらいだ。

 より泣ける、あるいは考えさせるストーリーにできる。


「で、具体的には?」

「ごんたちを兄弟にするとか」

「増やすメリットは?」

「各シーンでの動きが派手になるわね」

「派手?」

「冒頭のシーンでウナギを集団で連携して逃がせるわ」

「ただの窃盗団だろそれ」


 兵十の気を引く役、びくを倒す役、ウナギを持ち去る役などの連携がなされた狐たちなんて嫌だ。

 それは最早いたずらのレベルではないと思う。


「じゃあ、お詫びに置いていく栗や松茸の量を増やせる」

「それは悪くないな……ん、待て。最後のシーンはどうする気だ?」


 最後のシーンと言うのはごんが最後、兵十に撃たれるシーンだ。

 部長も少し考えて文章を語り始める。


「『戸口から出ようとするごんをドンと撃ちました。ごんはばたりと倒れました』」

「その後だな」

「『ごんが撃たれ、戸口から出ようとする兄弟を兵十は次々と撃ちました』」

「B級パニックホラーかよ」


 逃げ惑うごん達兄弟を撃ち殺し続けていく兵十。

 サイコキラーか何かか、あの男は。


「あ、火縄銃じゃ連射できないからショットガンにしておきましょう」

「論点はそこじゃねえよ!」

「そして、全て撃ち殺した後に『ごん……お前らだったのか』」

「遅えよ、気づけよ!」

「『兵十は、銃口から立ち上る煙をフッと吹き、ショットガンをばたりと血の海に取り落としました』」

「何故やり切った感を出す」

「『ごん。罪は罪だ。償ってもらうぜ』」

「ハードボイルドになってるじゃねえか!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る