第6話「診察」

私は声が出づらいことを家族に打ち明けた。



お医者さんは精神的なものといってるけど、私は他に原因があるように思えてならないこと。


以前「声が出づらい」で検索したときに「痙攣性発声障害」という病気がヒットしたこと。


自分の症状と似ているが珍しい病気で、北海道では専門のお医者さんが一人しかいないこと。


札幌の北海道大学病院に専門医がいるから、今すぐここで診察を受けたいこと。




必死に訴えた。




翌日、母に付き添ってもらい「大学病院」にいってきた。





そして、ようやく音声外来の先生に会うことが出来た。





「話してみて」と言われ、




促される単語をいくつか話すと、




「痙攣性発声障害でほぼ間違いないと思います。今までよく頑張ったね」。




そう言ってくれた言葉が魔法のように私の心に響いた。





今までの思いが、涙と一緒に溢れて出て、どれだけ楽になっただろうか。








先生は続けて、



病院の先生が病名を知らないほど稀な病気で治療も難しいということ。



現在は根本的な治療はなく、症状を一時的な緩和させるような治療してできないこと。



研究段階の病気だそうで社会保険が適用ではないこと。



北海道のこの病院では診察はできても、その治療はできないこと、



交通費、治療代を含め、一回の診察に多額なお金がかかる上、治療法がいまだ確立していないため、私くらいの症状だとあまりオススメ出来ないことを教えてくれた。





治るかもしれない、楽になれるかもしれないと思っていたが、どうにもならない状況のようだ。





私が他の方と比べて軽度だという事はうすうす感じていたが、でも私も治りたい。私の今までの気持ちはどうなるの?絶望感で一杯になった。




とりあえず、私は会社に辞表を提出し、実家に帰ることにした。



この先のことを考えると不安でどうしようもなかったが、とにかく今は、この精神状態を静養することが一番と考えたからだ。





先行き不安ではあったが、




持ち前の反骨精神が、



「絶対に負けてたまるか」



と叫んでいる。








ここから、



本当の意味で声の不調を抱えた人生がスタートした。

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