雨ふりを感謝したくなる、そんな思いが詰まった物語ですぜ!

横浜中華街を舞台にしたショート・ストーリー。
「街コン」参加作品ということで、「こんな良い風景が観えますよ」とか「こんな美味なる食べ物がありますよ」などの宣伝物語なのだろうと、物語を読み進めました。街を薦めるならそれが常套ですから。
違和感を最初に覚えたのは、“ 晴れの日 ” ではなく “ 雨の日 ” であったこと。なぜ雨が舞台設定で必要なのかしら、とさらに進みます。「アッ、そういうことね!」と思わず溜飲が下がったのは後半のシーンです。こういう仕掛けが用意されていたのかと、ため息交じりに納得いたしました。

街には変わらない佇まいがあります。でもいつまでもそのままってことはあり得ません。特に繁華街などは顕著でしょう。その中で変わらない、あの頃のままの “ 人 ” に出会ったら、それは変わらない景観以上の喜びを感じるのではないでしょうか。
無機物で造られた街を懐かしむのは、そこに住まう人がいるからこそ。そんな思いを感じさせてくれる、珠玉の作品です。

あさりソバ、食べてみたい……

その他のおすすめレビュー

高尾つばきさんの他のおすすめレビュー319