第3話「現代宇宙人の事情」
「べつに
ソラは差も平然とそんなことを言った。
「えっ、ちがうのか、どこでもよかったのか?」
僕は、思わず遊び人に引っかかってしまった女子大生のようなセリフを口に出してしまう。
「どこでもじゃないさ、それなりに知的生命体がいないとまずいからな」
「ん? じゃあ地球に文明があるのはわかってたってことなのか」
それとも適当に出発したらたまたまついた場所にいたのが知的生命体だったってことなのだろうか。
「地球に知的生命体があることは分かってた。けど俺が光となって出発したのはもう50年も前なんだよ」
「50年前か……全然生まれてないな僕、最初の東京オリンピックとかその辺の年代だぞそれ」
「俺が地球に移り住むためには光として、データをキャッチしてもらわなければならない。必ずしもキャッチしてもらわなくてもこちらから入り込むこともできるが、少なくても俺が干渉できる余地が必要だ」
50年前というと、アメリカは宇宙開発の全盛期だろうけど、日本はどうだったかなあ。少なくともテレビ中継はしていたから、電波は利用されていたろう。
「日本じゃなくてもどこかの国が電波をキャッチしてくれればよかった、すでに電波の利用は一般的だったようだからな。ただ、俺らが観測できたのは50年前からさらに50年前の地球の情報だけだった。俺が情報をキャッチしたときは、まさに電波の黎明期ってやつだよ。正直俺が地球に向かって出発した時点では、地球の電波が干渉できるだけ発展するかはどうか確信はなかった。結構なギャンブルだったよ」
電波の利用がされ始めたのっていつだっけかな、たしか1900年初頭の日露戦争の頃にはすでにモールス信号とか使っていたって聞いてるけど。
「宇宙の一般的な常識から、おそらく文明は進歩するだろうと思ってはいたが、正直今こうして無事に地球人と会話出来てるのは感動できるレベルの話だと思う。要は賭けに勝ったということだ。それに知る限りすでに地球は何回か核戦争の危機があったようだし……たどり着いたのはいいけど、生命体が滅びてたという可能性も十分あった」
そして、確率的に一割くらいは地球につかずに、そのまま宇宙の漂流者となる可能性があったらしい。
ソラは、100年前の地球を見て今の地球を予想し、自分の情報がキャッチされると信じて出発した。ソラが言うとおり結構なギャンブルのように思える。
あと、ここまで話して分かったけどソラくんは結構バーッと一方的に話すタイプっぽく、僕の反応を待ってくれない。おかげで情報を整理するのが大変だ。頑張ってソラに合わせて僕は質問をする。
「ある程度あいての文明が発達してなければ移動できなかったてことかい?もし地球の文明がそのいわゆる電波とか、WIFIとかそういうのを利用できていない段階だったらどうなってたんだ?」
ちなみに僕は、スマホが使える原理とかをよくわかってないけどね。今自分で言ったWIFIが何かも、実はよくわかってない。
「光は直進しかできないからな。違う星にぶつかるまで気長に一人旅だよ。その星が文明を持ってなければまた、次の星へ。それこそ天文学的な確率だろうけど、いつかは何とかなっただろうな。星は無限にある、だからさ、いつかいつの日にかはキャッチしてもらえるのさ。今回は50年の旅ですんだ、それでもかなり寂しかったな」
果てしない、そしてあてのない宇宙旅だったんだな……。
「50年独りぼっちか、それはもう何というか僕なら孤独でそれだけで死にそうだ」
50年の孤独ってことか……100年の孤独って焼酎ががあったのを思い出す。
うん、全然関係ないけどね。
「とは言ってみたものの、実際はコールドスリープしてたみたいなもんだから、50年前にちょっと寝て起きたら、お前のスマホのなかにいたって感じだよ。だから寂しいっていうのは嘘。本当に一瞬だった、ジェラルにいた時なんて昨日のことのようだよ」
なんだよ……。ちょっとかわいそうって思ったのに。まあ、でも長い間眠って、ある日突然目が覚めた人の気持ちってそんな感じらしいし、そういうもんだろうな。
俺も昔、試合中に気を失ったことがあるけど、気が付いたときには時間の経過分からず、時計見てびっくりしたからね。
「ってことはさ、ソラ以外にもほかの星とかから、この地球にも来てる生命体がいるのかな」
と聞くと少しソラは考え込んだのか、間をあけてから話し始めた。
「思ってる以上に地球外生命体がいるのは確かだ。でも地球にターゲットを絞ったのは俺くらいじゃないかな。他にも目指すような星はいくらでもあるからな、それこそ宇宙の知的生命体は数えきれないほどいるんだ。それにジェラル全員が星間移動したってわけじゃないんだよ。だから、地球に着たやつがほかにいるかって言われると、確率はそんな高くないと思う」
そうか、知的生命体は非常に珍しい存在なのかと思ったらそんなでもないんだな。別に地球が知的生命体がいる激レアな存在だからここに来たってわけでもないのか。
「じゃあ、なんでソラは光になって、当てのない旅になる覚悟までして、移動しようと思ったんだ?」
わざわざ高度な文明を捨てる必要なんかないんじゃないかと思うけど。
そういうとソラは、また少し考え込んだ。
「それに関してはプライベートな問題ってやつだ。女の子の秘密だよ」
聞き逃せないことをソラは言った。
「えっ――お前女子なのかよ!?」
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