半月

水円 岳

第一章

序 半月

 月の裏側が見えないことは、みんな知ってます。誰も疑わないし、見ようとする人もいないわ。


 でもね。半月は、暗い方もこっちを向いてるのよ。私たちはそれを見ても、見えないふりをしている。本当は見えているのに。


 それがなぜ暗いのか、分からないから。そこに何が隠されているのか、分からないから。満たされていくのか、奪われていくのか、分からなくて不安だから。


 私たちは、みんな半月。半分は見せているけれど、残り半分は自分自身にも分からないの……。

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