361錠.帰還を乞う

時よ、私の絶望を何処へ隠した

どれだけ時が流れたところで消えはしない過去の記憶があるだろう?

光を反射し鮮やかに輝く泡のように浮かんでは消えていくのだ

あるのはわかっている

見せろ

私の絶望を返せ


愛よ、私の絶望を何処へ隠した

どれだけ愛されたところで消せはしない過去の記憶があるだろう?

光を求めて葉をのばし生きる華のように咲いては散っていくのだ

あるのはわかっている

見せろ

私の絶望を返せ


苛烈であった私は何処へ行ったのだ

他人を軽蔑し

世界を睥睨し

希望を捨て

激情を吐き

晴れやかな青い空にさえ闇を見いだし

月すら不確かな夜の闇を求め

闇に紛れるように漆黒の衣装に身を包んだ


返せ

私の絶望がどれだけ心を蝕もうと問題ない

私の心が美味いのならいくらでも喰うがいい

荒れ狂う絶望も無残な心も全て糧にしてくれる

返せ

私の絶望を何処へ隠した

返してくれ

絶望わたしを返してくれ





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る