あれ?これってディープな話?

私はまあ、病人だ。


若い頃は会話もできない、目も合わせられない、皆の前で声も出せない。かちこちに固まった体で歩くから、いつも歩き方やきょどりの癖を真似されて困った。


言われてても言われてなくても悪口が常に聞こえ、関係のない人まで怪しんで見てしまう。首が勝手にそちらを向くのだ。これには参った。参ったのでこうさーんと高校を中退した。せっかく進学校に進んだのに。でも全部丸暗記だ。理解できた科目なんてひとつも無かった。


無気力、世の中への興味の無さ、自殺願望。16歳の私の心はずたずたで、受け入れてくれたバイト先でも浮いてしまいヘマばかりした。

そこの人たちが優しくて、「一度世の中探検して、またここに戻ってきなさい」と言って高校卒業と同時に辞めることになり、そこで月5万ももらえ、50万貯めた。


そこは現在大手でここ大阪にもチェーンを出している。どこかは言わないけど。向こうはとっくに忘れてるだろう。


さて、ネガティブに始まった私生活は、始まったと同時に就職活動も兼ねており、私は大変心苦しく、えっちらおっちら求人を見た。

しかしどこにも受かる気がせず、そこで耳に入ったのが地元で有名な歯科医院の求人で、私は「道が開けるよ」と周りから助言&支援をしていただき、ようやく電話をかけて面接し、ダメな子ぶりを披露して逆に気に入ってもらえ、就職が決まった。


さて、ここで問題。


私は根性があったでしょうか?無かったでしょうか?


私はよく休んだ。歯科助手とは相当な激務で、メンタルも削れる削れる。私はやられてしまった。

ある日先生が切れた。「お前なんで何回もその日に休むんじゃ」


当たり前である。病歴も暴露したら、早速しごきが始まった。

周りの人も、一言もしゃべらない機械みたいな私をどう扱っていいかわからない。お互い気持ちはすれ違い続け、向こうが気を許してくれても、いじめから守ってくれても気が許せなかった私が馬鹿だ。馬鹿なので首になった。


たっくさん傷つけられたし、傷つけた。

最後の方なんて職務怠慢甚だしかった。私は始めのしごきですっかり根が腐りはて、「勉強なんか、死んでもするかよ」と思っていたし、私をしごいてくださった人たちは私がなぜ勉強しないのかと不満だった。ちなみに私はどんくさく、雨の後落ちている落ち葉を拾うのに一時間かけて箒で掃き、「こうすればいいでしょ」といらなくなった手袋で拾う先輩を見て、「アホですみません」と思っていた。

焼き肉パーティーでお肉なんてとてもとても、食べられやしない。

それでも皿によこしてくれる肉を食べ、私は立つ瀬が無かった。


そこを辞めてから、らくーな職場を探し、色々失敗しながら最終的にはコンビニで早朝から入り、後はランニングするなりなんなり好きなようにできるという仕事を選んだ。


この頃気を許せる友がいた。どのくらい気が許せるかと言うと、私が50万貯めた、見て、と言って金を置いて部屋を出ても、絶対に触らなかった。数えて遊びはしたが。彼女と私はこれからたくさん遊べる気がしていたが、彼女にはリア充としてのスケジュール、私には貧乏人としてのスケジュールがあり、全く遊びに行けなかった。


これは後々まで恨まれたに違いない。私の精神的マイノリティの話をしても引かなかったのは彼女だけだ。

私はこうして、たった一人の友を図らずとも裏切ってしまった。メールに「明日も遊べない。経済的に余裕がない」と書いたときの惨めさったら。

今にして思えば、後悔の連続だ。人は後悔して生きていくものだと言うが、私はそん中でも下手くそだ。


こうして裏切り裏切られ、私はえっちらおっちら人生の坂を上り、今にたどり着いたという訳です。


一回地元を出られたのは、結果的に良かった。母を自由にしてあげられたし、兄も道を見つけた。私はどうなのだろう。これも道だろうか。お遊びだろうか。なるべく真剣に向き合っているつもりだけれど。


今私は朝夕寝る前、必ず薬を飲んでいる。月一回の注射。一度でも欠かせば死に関わる。


結構ハードな日常送ってんだなと、らりってるわけでもない私は思う。

まだ打ち込めるものがあるだけマシだったか、といつも考える。障碍者スポーツならぬ、障碍者アート、そこまで検索して、「別に障碍者じゃなくてもいいだろ」と思った。


私はただいま療養中。だが至って元気で社会的常識もある、大丈夫だ。


病気病気、言い出したらキリないぞ。忘れるくらいがちょうどいい。

だが、上手いことして、楽しく行きなさいよと主治医は言ってくれた。


私の人生、打ち上げ花火みたいだな。ぱーんと急に上がって、最後にひゅるひゅる消えていく。

それを言えばみんなそうさと、物陰に佇む階段状のクワズイモ。死ぬかと思ったら、新しい葉っぱが出た。

そうか古い奴を切り捨てて生きていくんだ、と私は、何か悟りを得たようにも思えて。


思い出は残すまい、と写真を撮らない私。犬がこんなに可愛いのに。

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