耀翔、蓼、レイハのハチャメチャな日常が始まりました?

レイハの主人マスターの一人である、国原耀翔くにはらあきとは国で有名な小説家兼、同じく主人マスター水無月蓼みなづきりくの政治的補佐をしていた。

二人共この國で最も貴いモノとされる『深紫色紫水晶の瞳』をしており、階級も王族と同じ最上位に位置していた。 二人の両親も同じ紫色の瞳をしているが、二人程濃くは無く、二人は国原家と水無月家の誇り高い存在だった。

で、まァ二人の説明は此処ら辺りで置いといて。

或る日二人は議会の後に戯れで寄った奴隷オークションで、運命的な出逢いを果たした。

ソレは一瞬で二人の視線を思うままにし、二人の心を鷲掴みにした。

無骨な獣用かと思う檻の中に手首を拘束され、雑に放り込まれた少年が何とは無しにコチラをチラリと見たのだ。

その瞳と表情カオに二人は精神ハートを撃ち抜かれた。

白銀の綺麗な長髪に紛れる様にしてあかくろの瞳がチラチラと覗く。真っ白なスベスベの肌に、淋しさと諦め、儚さと怯えを滲ませた表情カオをしており、まるで二人の眼には儚げな雪の精が舞い降りた様に感じた。

気付けば最高額である三億の十倍、三十億を彼に支払っていた。

当の彼は『はァ!? 何俺如きに三十億も払ってんだ!?』と言うような、吃驚した表情で二人を見た。

瞳からは今にも溢れ出しそうな透明な滴が溜まっている。……本人は気付いて無さそうだが。

「嗚呼……『天の雫は渇いた大地を潤し 太陽の光は凍り付いた精神ココロを潤す 心の音はつちに降り』……ア痛ッ!?」

「…………小声で何ブツブツ変態詩を書いてるのかな、お前は?」

「う……あんまり感動し過ぎてつい…………すまねぇ……」

「…………そう言うのは小説の中だけにしろよ……俺まで変人だと思われるのは、御免だぞ?」

ニッコリと恐い笑みを浮かべながら睨む蓼に、流石の耀翔もタジタジになる他無い。

蓼が怒った時の恐怖は耀翔が一番理解しているのだから……。

奴隷オークションから帰ってきて、ついさっき目を覚ましたレイハを見ながら二人はそれぞれ言葉を掛ける。

「…………へぇー本当に赫と黯だね……」

「だな。しっかし綺麗なモンだな、思わず喰いたくなるのは当たり前かもな……」

「…………ア、コイツの発言は基本無視で良いから。身体どう? 大概疲れてたンだろう?」

「蓼サラッと酷い。で、御託は置いといて真面目に大丈夫か?」

まるで漫才の様な会話をしながらレイハを心配そうに見る。レイハは困惑気味に言葉を返す。

「…………だいぶ楽、で………………あの、俺の……服、は……?」

「…………無いよ。逃げられても困るし、一応保険として、な?」

「…………キャー蓼くんの変態〜♪ って痛いッ!」

「…………耀翔。無駄口叩くなら、シメ上げるよ?」

「ヒィッ!? 御免なさい俺が悪かったです!」

「…………ふふ……仲、良いですね…………」

「何処が?(笑った!?)」

「何処が!?(笑ってる!?)」

蓼が現状説明をしていると、横から耀翔が茶々を入れる。

漫才会話にさしものレイハも思わず相好を崩して笑う。

「ふふ……おかし……」

笑い過ぎて薄ら眼に涙を浮かべるレイハに、主人マスター二人はどうすれば良いのか解らずに顔を見合わせる。

「…………ま、馬鹿は放っといて。お腹空いてない?」

「馬鹿じゃないぞ!?」

「……………………そう、言えば……」

レイハがこわごわと自身のお腹に手を当てるのを待っていたかの様に、ぐぅぅ〜ッと小気味良い腹の虫が鳴いた。

「〜〜〜〜〜ッ!」

「アハハ……身体は正直だなァ〜?」

「…………待ってて。今持ってくるから……」

顔を真っ赤に染めてお腹を押さえるレイハを、嬉しそうに見ながら蓼は台所に向かい、耀翔は愉しそうに笑いながらレイハの頭を撫でた。

「アハハ可愛い〜♪」

「〜〜〜〜ッ」

「…………お待たせ、持ってきたよ。……耀翔、揶揄からかうの、止めてあげたら?」

「いやぁ無垢で可愛いな〜♪ 俺にもその無垢さを頂戴よ〜♪」

「〜〜〜〜〜ッ! 無、無垢な訳では……」

「…………耀翔いい加減にしような? ご飯食べるに食べれないだろ」

「うぇーぃ……」

蓼が台所に取りに行って持ってきたのは、籠いっぱいに溢れんばかりに入っている様々な種類のパン類と、各種ジャムやソース、瓶に詰められた透明な水と注ぐ為のグラスだった。

「…………おいで。お腹空いてるんだろう?」

「蓼、っさし〜♪ 俺も食べよっと♪」

「…………や、あの……着るモノ、下さい……」

「…………何で?」

「どの道昨日の時点で調べ尽くしてるし、見尽くしてるから今更隠す必要無いよ?」

「…………ッ!?」

「…………涙目のブラッドブラックは、綺麗な色合いだな」

「な〜♪ 実に美味そうだ♪」

二人の主人マスターを涙目で睨むレイハは正しく、現世に舞い降りた天女か儚げな精だった。

「…………っと御託は置いといて。早く食べなよ?」

「そそ早く食べないと俺が食べ尽くすぜ?」

「……だから、着るモノ……」

テコでも動かないと毛布に包まって座り込んでいるレイハと暫く言い合った末に、レイハが布団に包まったまま食事を取る事を赦した。

ソレからハチャメチャな食事が始まった。


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