第49話王都襲撃編 最後は締めよう

 暴帝は矢が飛ぼうがリベールから目を離さない。これが俺の怨敵だ!と言わんばかりの執着ぶりで爪を振るう。口を嚙み鳴らす!


 暴帝の威嚇にもリベールの心は波紋の立たぬ水面そのものだった。

 一歩後ろに下がり、暴帝の見えない吸い込み効果が付与された尻尾の一撃をかわし、静かに常闇の斧を構える。

 その刹那リベールの体が緑色にボンヤリと光り、彼女の体は仰け反る。その上半身の僅か上を見えない爪が駆け抜ける。


 緑色の光、これこそベルセルクの持つ唯一のスキル「バーサーク」!

 ただただ火力を上げるのみのスキルだ。その分防御力は下がるが元よりビキニのリベールには全く問題はない。防御力が極小がさらに下がろうとも影響などない。元より当たるつもりもない。


 絶え間なく飛ぶバリスタの矢、リベールの舞うような斧捌きを持って暴帝は削られて行く。

 戦うこと半時間と少し、暴帝の尻尾に巻き込まれたスキンヘッドという犠牲を出しながらも、ついに暴帝は倒れる。


 その瞬間濠雷のごとき歓声があがる。


 続いて覇王龍、氷龍も倒れ場は静寂を取り戻す。

 これが最後の襲撃だったようで、あたりにはモンスターは一匹も残っていなかった。


 再び戦士たちは歓声を上げる。勝ち切った喜びを分かち合う彼らの声、声、声。


 チーズポテトがグルードがしゅてるんが皆リベールのいる中庭に集まってくる。


「お見事です。リベール殿」


 チーズポテトが敬礼のモーションをリベールに行うと、リベールも同じモーションで返礼する。


「いえ、チーズポテト殿達のご活躍があってこそです」


 集まった全員を見渡しリベールは今一度敬礼を行う。


「皆さんに感謝を。では私はこれにて」


 去っていくリベールに全員が敬礼のモーションを取り彼女を見送るのだった。しかし全員口に出さなかったが、グルード以外全員パンサービキニが気になって仕方なかったのは、公然の秘密である。

 見事なぺったんであったとだけここでは記そう。


「あれ?ゴルキチは?」


 チーズポテトはスキンヘッドの浅黒い肌をした男――ゴルキチがいないのに気がつく。


「ゴルキチさんは、回復クリスタル待機です」


 笑いを堪えつつイチゴはゴルキチの位置を教えるのだった。そう、ゴルキチは暴帝の見えない攻撃に巻き込まれ「喰われた」ため、死亡待機中というわけだ。

 それにはさすがのグリードといえども、笑いを堪えることができず。全員に爆笑されることになってしまったゴルキチ。最後まで締まらないリーダーであった。


 こうして襲撃イベントは終了した。

 余談ではあるが、パンサー装備を装着した際に語尾が「にゃん」になる仕様は、あまりの不評のため修正されていたとここに付しておこう。

 リベールは「にゃん」のことを忘れていただけだったが、もし修正されていなかった場合せっかくの騎士風セリフが全て台無しになっていただろうから、幸運であったと言えよう。


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[暴帝討伐!]少女騎士リベール その232ぺったん


<スペック>


名前:リベール

性別:女

職業:ベルセルク

特徴:身長低め、茶髪アップに黒目の怜悧な顔、ぺったん

装備:武器 レア度9常闇の斧 レア度2 パンサー装備 

出没場所:王都アジト


21.名無しのドラゴン

暴帝など何するものぞ!


24.名無しのバスター

やべえwwwかっこいいwww


26.名無しのドラゴン

服以外はなw


27.ぺったんマスター

いや、あれがいいんじゃないか。ハアハア。真面目な顔でパンサー。


29.名無しのジャッカル

イベント参加した人お疲れ!


32.名無しの魔法少女

>>29

おつかれさまー。リベールさんカッコよすぎ!


39.名無しのバスター

パンサーのことなんてすっかり忘れていたわw


41.名無しのジャッカル

実際のところ、リベールたんが引っ張ってくれなかったらやばかったなw運営後先考えなさすぎw


44.名無しのドラゴン

暴帝が出たとたん、フィールドがひどいことになってたなw


46.ぺったんマスター

そんなことはどうでもいい。リベールたん。ハアハア。


48.名無しのバスター

>>46

パンサーは分かったから落ち着けw

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――イチゴ

 外壁扉前で待機していたイチゴに突然テルが入る。


<イチゴさん、頼みたいことがある>


 テルをしてきたのはなんとリベールだった!


<どうしたの?リベールさん>


 巡るましく動く戦場を見つつも、リベールに意識がほとんど飛んでしまうイチゴはもうどうしようもない。


<王国教習所に入団させてくれないだろうか?>


<ゴルキチさんが断るわけないとおもうし、ギルドに入るのは問題ないと思うよ>


 リベールさん、ここに来て参加!? やった! イチゴの思いと同じ依頼をリベールはテルしてくる。


<今ゴルキチさんにはテルとギルド入団申請を送ったよ。ありがとう。後ひとつ、イチゴさんに頼みたいことがあるんだ>


<リベールさんをここまで移動させればいいのかな?>


 参加するなら、移動魔法で瞬時に移動しなければ間に合わないよね。イチゴの予想は的中する。


<すまない。頼まれてくれるだろうか?今私は自宅にいる>


<すぐ行く!リベールさん待っててね!>


 テルしながらもすでに移動魔法を唱えているイチゴ。彼女がリベールの自宅を拠点登録していないはずがない。

 無事イチゴに「王国教習所」アジトまで移動させてもらったリベールは、アジトの屋上に登っていくのだった。


「騎士たちよ!戦士たちよ!戦いに赴く全ての勇気ある者たちよ!暴帝など何するものぞ!」


 リベールのシャウトが戦場に響き渡る。この言葉でイチゴはもうメロメロになってしまい、これ以後戦闘行為を行うことが出来なくなってしまった......

 リベールは問題なく「暴帝」を引っ張り、中庭で決戦を開始する。メロメロになったイチゴはリベールのパンサー装備に釘付けになっていた......わけでは当然なく、リベールの流麗な戦い方にただ見惚れていただけであった。


 襲撃イベント討伐後「打ち上げ」と称し、イベント終了時に死亡待機させられていたゴルキチを皆ではやし立てながら暫くチャットを交わした後解散となった。


 いよいよ再来週からクリスマスイベントが始まるらしい。巨大モミの木育成イベントは現在進行中ではあるが、どんなツリーができるのだろう。イチゴは出来上がったツリーに思いを馳せると急にイベントが待ち遠しくなった。

 ドラゴンバスターオンライン公式サイトには、「襲撃イベント」の様子がアップされ戦士達の勇壮な様子が熱く語られていた。

 それとは別に、トップページの上部にデカデカとあることが発表されている。その内容にイチゴはニヤーと再び妄想に入ってしまった。


<本年度のMIP(最も印象に残ったプレイヤー)の投票を、明日のメンテナンス開けよりクリスマスイベント開始前まで行います。皆様奮ってご投票ください>


 と書かれていた。

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