第2話 闇の先

 目的地に着いた私たちは、歩みを止める。

「……よし、戻ろう」

 彼女も気が済んだのか、太陽に背を向けた。

 私も、それにならい振り返る。

「────っ!」

 そして、私は目の前の景色に息をのんだ。

「……」

 彼女も景色に驚いたようで、何度か後ろと見比べていた。

「……違いすぎね?」

 私が声にして告げると、彼女も「やばい」と言った。

 西を向けば、沈みかけの太陽が輝いている。雲もまばらで、それが一層、景色を楽しませてくれる要素になっている。

 そして、太陽から始まるオレンジから青へのグラデーションが綺麗だ。

 北や南を向いても、夜空とオレンジのグラデーションで、そこそこ綺麗だ。

 しかし。

 東……寮のある、帰るべき方角は、真っ暗だった。しかも、他の方角と違い、分厚い雲が空を隠している。

 街灯も少ないし、街も見えない。

 いうなれば、闇夜。

 帰路につく私たちは不安に包まれていた。



「やばい……なんか絶望に向かってる気分」

 彼女の言葉に、私は時計をみる。

 8:10。そろそろ街が見えてきてもいいはずなのに、辺りは変わらず真っ暗で、街の明かりなんて見えない。

 私は不安を吹き飛ばすために冗談を言った。

「間違ってないんじゃね?」

「え?」

 聞き返してきた彼女に「履歴書地獄~」とおどけて見せると、彼女はすぐに理解してくれた。

「……私もあっちには絶望しかないかも」

 会話はすぐに途切れとしまい、私たちの間には沈黙が訪れる。

 その沈黙は、私たちの不安や恐怖心を煽った。

「あっ……」

 彼女の声に、下を向いていた私は顔をあげる。

 真っ暗な木々の壁の先に、街の光がようやく見えてきたのだった。

 私たちの心から不安や恐怖が消えていく。

「セーコマよっていい?」

 私は突然の思い付きを言葉にした。

「いーよ」

 彼女はそれを快くOKしてくれた。

 寮へ帰る道中にあるセイコーマート。

 それは、古丹別唯一のコンビニだ。

 私はセイコーマートでシュークリームを買った。



 寮につくやいなや、私たちはすぐに入浴タイムをむかえた。

 私たちはなんとか9時前に入浴を終え自室に向かう。

「あ、おかえり」

 目の前には女子寮一 頭がいいであろうクラスメイト。

 私たちは「ただいま」と返した。

「あ、こいつの部屋で女子会しよ」

 私の言葉に、ごみ捨てに向かおうとしていたその子は「いいよ」と笑う。


 その後、私はシュークリームや部屋にあったお菓子を持って、彼女の部屋に遊びにいった。

 少し待つと、あの子が来てくれた。

 そして、私たちは真っ先に話すのだ。

 スマホでとった景色をみせながら、散歩の感想を。

 その後、色々な話をして女子会を満喫したり、後日、その子も含めてまたお散歩へ出たのは、また別のお話。

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