第7話 鉄のドア



 屋敷の中は暗かった


それから妙に湿っぽかった


 開けてくれたのは小柄な女性で黒っぽいマントのようなものをかぶっている


 「こんな格好で・・・」ゆっくりと言ったが発音がひどく不明瞭だ


「ごめんなさい」 奥のほうから同じような声がした


ぎょっとして声のしたほうを振り向くとまったく同じような女の人が座っている


 「電話を貸してほしいのですが・・・」彼が言うと何かをひっかくような耳障り


なキイキイ言う音がし てそれが笑い声だと気づいてなぜかぞっとして全身に鳥肌が


立った


 「公衆電話があるよ」一人が言った


 「そうそう」もう一人も言った そして耳障りな声 キイイイ キイイイイ


 「公衆電話?」彼が言った 


「そう外に すぐそこに」 「電話ボックスが」 キイキイキイイ


「近いんですか?」彼が言って外にでようとしたので「待って」と慌てて言った


 「私も行く」こんなところに取り残されるのはごめんだった


 それに彼はなんでこんなに焦っているんだろう 


事故にあったと言ったって二人ともけがをしたわけじゃないし 車だって動くかも


しれない


  らしくないと思った


 いつも落ち着いている彼らしくない


「いいからすぐ戻るからここにいなさい」 振り返りもせずに鉄のドアが大きな音


を立てて閉まるのを聞


いたときに私は地獄に叩き落されたような気がした




 





















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