Ep:7「僕の下着事情…あれ?これって?」

夕食を食べ終えた後、僕は使った食器の洗い物を、優は自分の部屋に向かった。

ちゃんと自分の分の食器は洗い場まで持ってきてくれる優。


「それでは、お願いしますね、姉さん……」

「うん、ありがとう。美味しかった?」

「はい。いつもながら美味でした」

「ふふ、ありがと」


基本炊事場に立つのは僕だ。

調理も片付けも僕がしている。

優は基本料理をしない。

いや、しないのでなく出来ない、が正しいと思う。

優は高い頭脳や才能を持っているのだが、”家事”に関して全くもって駄目なのである。

昔、僕が炊事場で料理しているのを見て、優は一度だけ興味から手伝おうとしてくれたのだ。

だが……うん、結果散々と言った結果となった。

…作るより、片付ける方が時間を使うことになったね。

あれ以来、優も手伝うことはなくなった。自分に向いていないことを実感したみたいだ。

ちなみに、優に向いていないのは料理だけでなく裁縫や掃除と言った家事全般に該当するものだった。


でもまあ、優には優秀な頭脳があるから問題ない。

家事が出来なくても、優の優秀な才能によってお金を稼ぐことが出来るのだからね。

僕たち兄妹はお互いに支えあえているので問題はないのです。


「~♪、よぉし、っと。これで最後っと」


僕は鼻歌交じりに最後の食器の片づけを終える。

うん♪。こうして綺麗になると嬉しくなるんだよねぇ~♪。


僕は洗い物を終えた後、お風呂に入る為に自分の部屋に戻る。

タンスに近付くとパジャマの入っている段を開ける。

パジャマを取り出した後、下着の入っている段を開けようとしてふと手を止める。


……下着、どうしたらいいのだろうか?

今の僕は男ではなく女の子になっている。

倫理観から言えば女性ものの下着を着用するのが普通と思う、のだけど…

優の我が儘である女装では仕方なく着用していたが、普段は当然男物を付けていた。

男だったのだから当然男物。でも今は女。

悩む僕。

悩んだ末、僕は家の中でくらいいいかなと下着の段を開ける。

開けたのだけど………どうしてだろ?

開けたタンスにはなぜか男物の下着がなく、女性用の、女装時に身に着けていたショーツしか見当たらなかった。

なんで?と困惑していると優特製のスマートフォンに通話が入った。

僕は慌てて通話ボタンを押して耳に当てる。


『そろそろかと思い連絡しました。タンス、開けました?』

「いま、あけて見てるところだけど、これどういう事!?いつの間に!?」

『おお、ナイスタイミングです。はい、姉さんが夕食を作っている間に、入れ替えておきました』

「そうなの…って……それで、もしかしなくても…」

『はい。今後一年は基本そこに入っているものを使ってください。家の中だけでも男性のパンツを履くなんてダメですよ、今は姉さんなのですから』

「うぐっ!?読まれてる!」

『もしかしてと思いますがほかの段までは見ていないのですか?』


そう優に言われて私服とかを入れていてる段を開ける。

開けて思わず僕は「あぁ~」と打ちひしがれていた。

中身は男物の服はなく、フリルの入った乙女チックなシャツやスカートの類しか見当たらなかった。


「優!?僕の服はどうしたの!?そ、それと、もしかしなくても、これをその、僕が着るのこれから?」

『当然です!サイズは女装ユニットとほぼ同じと推察して用意しましたので問題なく着れるはずです。ただ胸までは正確に測れていないので、一度着て頂き調整しましょう。…その為にも一度家を出る必要があるのですね…面倒ですが仕方ありません。姉さんをコーディネートする為なら致し方なしです』


うう、でも優が外に出るのならそれはそれで良い事かな?

優はほとんど家に引き籠るから外に出るなんて月に数回のみだから。ちなみに外に出る数回は学院に面倒がりながら通った時である。


「うう、わかったよぉ…シクシク………そのぉ…パンツくらいダメ―」

『ダメです』


キッパリと言われる。

男だったんだから正直言って違和感が凄いんだよ!

生地も面積も小さくて正直不安が大きいのです!

あと…恥ずかしい!

だって、男だもん!しょうがないよねこれは!


「うう、下着は仕方ないにしても、どうしてスカートばっかりなの、優?」

『似合うからです』


一言!?

その一言に『何を言ってるんですか?』と当然のように言われているように感じた。

えっと、それはつまり僕が男であった時より、スカートの方が似合っていたってこと!?

うう、寝込みますよぉ~


『あとは今後通う学院では当然スカートを纏うのです。今までよりも多くの時間履くのですから常に着用した方が成れるのも早いでしょう』


そうか、そういう考えもあったんだ。


『まあ、ほぼ9割は私の趣味ですけどね』


余計な一言だよ!さっきの一声が台無しだよ!

はあ、と溜息を付くと仕方ないと割り切ることにした。


「服に関してもうこれでいいよ。…それじゃ僕お風呂に行くから」

『はい、わかりました……では後程で――』


そう告げた後、優は通話を終えた。

僕はパジャマは既に出しているので下着のショーツだけ取り出す。

そして着替えを持ってお風呂場に向かった。

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