フェーズ:011『乳母車オバサン』

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Title:『乳母車オバサン』


近所に、名物というか

変わったオバサンが住んでんの。

あんま、こういう言い方は良くないんだろうけど

ちょっとイカレてるわけ。


そのオバサン、

昼間っから、壊れたミルク飲み人形を

乳母車に乗せて町中をあっちへフラフラ

こっちへフラフラしてて……、


正直、見てて悲しくなるし

気味が悪くもなる。


ま、そんなオバサンが

俺を見かけると手紙をくれんのよ。


手紙って言っても

なんかスーパーのチラシを

千切ったやつに

「いそいで」とか

「いえねらわれてる」とか

「もうすぐ、もうすぐ」とか

「ほらほらほら」とか

ちょっとヤバゲな内容が書かれてんの。


んじゃさ、近所に住む俺の幼馴染の慶介にも

オバサンが手紙を渡してることが分かったわけ。

オバサン二股www


で、慶介が受け取った手紙には

こう書かれてた。

「まにあわない」

「あなただけでも きづいてきづいて」

「いえねらわれてる」

「ああ ころされる」


おいおい、完全にぶっ飛んでるじゃねぇか。

でも、もっと驚いたことに

慶介と俺共通の親友、彰にも

オバサンが手紙を渡していたことが発覚。

オバサン三股www


ちなみに、彰が受け取った手紙には

「じんせい いろいろある」

「はやまっちゃだめ」なんて書かれていた。

は? 彰、自殺すんの?


放課後。

俺は慶介を家に呼んで

彰から受け取った手紙を読み返した。

だけど、なんのことだかさっぱり分からない。

諦めて、ゲームでもしようぜって言って

テレビをつけた瞬間――。


つき合い始めたばかりの

俺の彼女とその家族全員が

殺されたってニュースが流れた。


マジ……かよ?

現実を受け止められない。

号泣する慶介の隣で

俺はただ、茫然とすることしかできなかった。


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