月の夢

如月李緒

第1話 私の町

 北海道遠別町。

 それは海に面した小さな町。

 山も身近で農家も酪農家もいる。


 バス停でバスを待つ高校生。

 熊が出没しても「また出たらしいよ!」なんてどこか緊張感に欠ける中学生。

 校庭に現れた狐が珍しくて、それを追いかけようとする無邪気な小学生。

 幼稚園と保育園が合併してできた幼児センターきらりでは、小学校にあがる前の元気な子どもたちが今日も仲良く遊んでいる。

 "私"はこの町で生まれた。

 そして、きっと……この町で生涯を終えるのだろう。


 母方の祖父母は、市街地からすこし離れたところでもち米を作っている。

 遠別町は、稲作の北限の地。

 そんな町で祖父母が作るもち米は"はくちょうもち"と呼ばれる品種だ。

 また、父方の祖父は猟師をしていて、祖母は上品な雰囲気をもつ婦人。

 どちらも自慢の、私の大事な祖父母。


 私はこの町が好きだ。

 大切な人がたくさんいるから。

 中高生だった頃は、何もないこの町が少し嫌いだったけれど。

 大人になって、そんな気持ちはなくなった。

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