巡る命の偉大さに辿り着く、宮沢賢治のような奥深い作品

童話のような柔らかな語り口で、けれど奥深く、どことなく宮沢賢治を彷彿とさせる作品でした。

語り手である花はとても傲慢です。
でも、読み進めるうちに「彼」が花としての尊厳すら失いかけてしまった時、何でもできると信じたその傲慢さがたいへんな輝きを帯びて来たように感じました。
失ったその時に、花であることも傲慢であることも愛おしいと思えて、切なくなつてきます。

だけれどそこで終わらずに、最後には花でなくなったことこそも、生命が巡っていくひとつの過程であったことが感じられ、とても大きな自然の営みを発見させられます。

ひとつの花の運命から、めぐる命の偉大さへ辿り着く、とても奥深い作品でした。