第14話 井戸の茶碗

「リサイクルぅ~なんでもリサイクル~」


リサイクル屋の店主が車で町を回っていると、

キレイな娘が声をかけた。


「あの、お願いがあるんです」


娘に連れられて家に行くと、娘の父親が仏像を持ってきた。


「この仏像をなんとか引き取ってくれませんか」


「でも、仏像なんて僕は知識もないですし……」


「お願いします。本当は自分で売りたいんですが

 この通り、病気の身でして、娘にもいい服を買ってあげられず……

 なんとか200万で売ってもらえませんか?」


「引き受けましょう!

 200万以上で売れたら差額の半分もあげますとも!」


優しいリサイクル店主は引き取ってしまった。


店主は仏像を自分のリサイクル店に並べると、

ひとりの客がやってきた。


「いらっしゃいませ」


「この仏像が欲しい。縁起も良さそうだし」


客は仏像を買って、

磨いていると底の値札シールがはがれて

中から50万相当の宝石が出てきた。


「これはどうするか……。

 仏像は確かに買ったが宝石まで買ったつもりはない。

 この仏像の持ち主に返してあげよう」


客はそこで仏像の持ち主を探し始めた。

仏像を持ち歩いて、人を探す客の姿はすぐに噂になった。


一方で、その噂を聞いたリサイクル店主は

慌てて仏像の持ち主、父親のもとに走った。


「……ということで、持ち主を捜しているらしいんだ」


「もしかして、なにか失礼があったんじゃ……」


磨いていたら首が折れたとか……。

首が折れて縁起が悪いとか……。

お前ら同じ目に合わせてやる……とか。


「「 ひぃぃぃ!! 」」


店主と父親は震え上がった。


「とにかく、見つからないようにしましょう」

「で、ですね……」


二人は身を隠すことを決めた。

しかし、リサイクル屋はそうもいかなかった。



「リサイクルぅ~なんでもリサイクル~」


「おい、リサイクル屋」


リサイクル屋の車を止めたのは、仏像を買ったあの客。


「あああ! ごめんなさい! ごめんなさい!

 どうか首だけは折らないで!」


「首? なんのことだ?」


客は仏像の中から50万の宝石が出てきたこと。

それを持ち主に返したいことを店主に話した。


「じゃあ、リサイクル屋。

 この宝石はお前の方で返しておいてくれ」


「そういうことなら、安心しました……」


店主は宝石を受け取り、父親のもとへ戻った。

けれど、父親は宝石をつっぱねた。


「いえ、これは受け取れません」


「なんで!? これだけあれば病気の薬も買えるし、

 娘の服もいいのが買えるんですよ!?」


「やはり受け取れません」


店主はしょうがなく客のもとへ戻るも、

客は客で50万を受け取らないと突っぱねる。


「こちらから50万渡した手前、受け取れません」


「じゃあ、このお茶碗と! お茶碗を買ったということで!」


リサイクル屋は売れ残りの茶碗を勢いで渡してしまった。

もちろん、50万の価値なんてないのは誰にも明らかだった。



50万の代わりに茶碗を買った客の話は、近所の噂になった。


「ほぅ、そんな人がこの世界にもいるんじゃな。

 マロも見てみたいでおじゃる」


近所の大富豪は客に興味をもち、

茶碗を持ってこさせるように伝える。


客は大富豪に汚い茶碗を持っていくわけにいかず、

ピッカピカに磨き上げてから持って行った。


「おお! これはすごいでおじゃる!

 これだけの茶碗を50万なんて!

 マロがその茶碗、300万で買った!!」


大富豪から茶碗を300万で売られてしまった。


客としては50万で茶碗を買ったが300万は買っていない。

いや、そもそも仏像を買ったのであって300万は…(略


「えっ、仏像の持ち主に300万渡してほしい!?」


リサイクル屋の店主はとびあがった。


「どうせ受け取ってもらえませんよ。

 だって50万でも突っぱねたんですよ?」


「だったら、何か買い取ればいいんじゃないか?

 お前だって私に茶碗を売ったんじゃないか」


「でも、僕はもう嫌ですよ!

 どうせ断られたりするの面倒ですもん!」


「しょうがないなぁ。私が行くか」


そこで今度は客が仏像の持ち主・父親に、300万円を持って行った。

そして、予想通り突っぱねられた。


「いえ、こんな大金受け取れません」


「ふむ、だったら何か代わりにください」


客は家の周りを探したが、

リサイクル屋でもないので何もない。


父親はそこで助け舟を出した。


「でしたら、うちの娘を引き取ってください。

 今でこそボロを着てますが、

 磨けば見違えるほど美人になりますよ」




「……いや、磨くのはやめよう。

 また宝石が出てきたら、また面倒なことになる」

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