秋は短し。ゆえに貴く、美しい。

 瞬く間に過ぎゆく、秋田の秋。
 その刹那を巧みな筆致で捉え、文章でありながらまるで絵画のごとく色鮮やかに描いた作品が、この「秋は短し」です。
 本作において私が何よりも素晴らしいと感じたのはやはり、秋という季節を表現するその圧倒的な描写力に他なりません。どこまでも緻密で明媚なこの物語の文章を読んでいると、秋田県立美術館のガラス窓を通したオレンジ色の情景が今まさに、自分の目にありありと浮かぶようでした。
 本コンテストを通じて、私が最も「作中の舞台に足を運んでみたい」と感じたのも、迷う事なくこちらの作品です。
 わずか2,349文字の物語でありながら、言葉を超えた美しさにより味わう事のできる、爽快な読後感。いえ、むしろこの小説は、刹那を描いたとても短いお話であるからこそ、そのラストシーンの力強さが一層濃密で、心動かされるものとなっているのでしょう。
 秋は短し。ゆえに貴く、美しい。この一瞬の物語をぜひ、皆様もお見逃しなく。


(「ご当地短編小説」4選/文=あをにまる)

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