第8話スラム狩りバイト

 うーん、遠距離攻撃が出来る敵がいるのか。この操作性だとよけられる気がしない。しかし、あの魔法攻撃っぽいものはいいな。あれ覚えられたら狩りが楽になりそうだし。


 魔法はどうやって覚えるんだろう。昔やったことがあるRPGだとレベルアップで自動で覚えるか、魔法書のようなアイテムを買って覚えたりしたな。

 でもLV一で覚えるなんてのはなかった気がする。場合によってはLV十くらい必要かもな。私がLV一とはいえ一瞬で倒せる魔法なんて今は無理か。

 調合スキルを覚えるのだって数日と高額な授業料が掛かるようだし、今魔法にまで手が出せそうにないな。何せお金がない。



 ゲーム時間は二十三時、リアル時間は二十一時三十分てところかな、ゲーム内では四時間も経過しているのか、一旦休憩しようかな。

 でも、一旦ログアウトするとまたログイン出来ないかもしれないし、とりあえず座ってぼーっとするか、いや街の中でも散策するのも楽しそうだな、作り込みが凄いからなこのゲーム。

 まあダラダラしていたらMPも回復するだろうし。今のMPは半分以下になっている。死ぬと現状のMPの半分になるらしい。何度も死んでいるうちに分かった事実だ。最大値が二十として死ぬと十、更に直ぐに死ぬと五、更に死ぬと三、更に死ぬと二だ。


 夜の街を見学することにした。歩いていると串焼き屋を見つけたので、ちょっと味見してみようかな。


「おじさん。その肉は何?」

 屋台のおじさんに話かける。焼き鳥より少し大きなお肉を串焼きで焼いている。


「兎肉だよ。二本で百マールだ買うかい? まいどー」

 兎肉なんて食べたことないから分からないけど、ゲーム用にカスタマイズされた美味しさな気がする。まあ美味しければいいか。後で食べれるようにもう二本買っとこう。

 それに元気になった気がする。リアル追求するよりゲーム性が大事だよな。それに肉を食べても胸焼けしないのもいい。

 美食ゲームとかあったら受けるんじゃないかな。


 昼間はNPCも多かったが、夜はNPCが殆どいない。まあ、中世? なら夜に働いたり、活動する事もなかったろう。見学するにしてもあんまりプレイヤーが居るところは行きたくないな。


 プラプラ歩き、プレイヤーを見かけたら人が居ない方に、居ない方に、居ない方に、……ここはどこですか?


 明らかにただの住宅街のようだな。店などもほとんど見えないし、あっても当然開いてない。

 まあ用事があるわけでもないし、城がある方が街の中心だし、明るい方に向かって歩けば人通りが多いところに着くだろう。

 あっ明かりが動いている、あれに付いていけば人ごみに出れるだろう。しかしなんだか街の中心地とは離れた方向に歩いているような気がするけど、あれ? 消えた。

 

 消えた場所にはボロボロの家があった。よく見ると、この辺の家は掘っ建て小屋のような粗末なものが多い。もしかしてスラム街か? やばい気がする。もしかして襲われたりして……


「オイ爺さん、こんなところで何をしているんだい?」

 振り返ると、背の低いドワーフっぽい女の子が居た。私のほうが気になるわ、こんな時間にこんな場所にいるなんて。

 正直に迷子と伝えたところ、街の中心外に案内してくれるって、親切なNPCが多いなあ。彼女の名前はエルドワ、この辺の住人NPCでハーフドワーフという設定らしい。背中の羽の飾りが天使の羽のようでチャーミングだ。

 名前からして、エルフとドワーフのハーフかなと思ったら、父がドワーフで、母の父つまり祖父が獣人鷹、祖母が獣半魚人のハーフだった。それってハーフなのか? クォーターとか、ワンエイス、いやワンシクスティーンス、いやいやワンシクスティフォース、いやいやいや……やっぱりキリがないからやめておこう。


 中心街に着くまでの間に色々と話を聞かせてもらった。この世界のNPCでも食べていくのは大変で、村で子供が多く育った場合、地元では働く場所が無く、大都市なら仕事があるかもと期待して街に来たのは良いが、結局働けなくて、街の隅にスラム街を形成しているらしい。

 何でこんな設定まで入れてるんだろう不思議でしょうがない。力を入れすぎだよ全く。さて、人通りも多くなって来たし、ここなら見覚えもあるしお礼を伝えたところ、


「ん、ん」

 と言って手を出してきた。握手をしたら違うと怒られてしまった。マールを出せという事らしい。とりあえず百マールを渡したら、


「シケてるなチッ」

 と悪態を付かれたので、半端だった四百四十マールを追加であげたら、


「お爺さんありがとう。気をつけて帰ってね」

 ニコッ。だって、げんきんだなー。ついでに兎肉串二本もあげたら喜んでいたし、結構可愛いからこれはこれで……、ロリコンではないですよ、孫的な意味でです。


「結構あの辺に居るから、いつでも遊びに来てねー」

 ブンブンと手を振る姿は可愛かった、孫的な意味ですよ。しかし、迷子の私があの辺と言われれる場所にたどり着けるかどうかは分かりません。


 ゲーム時間は零時、日本時間は二十二時てところか。やっぱゲーム内の時間は体感二倍ってのは偽りなしだな。今日一日だけでも随分と遊んだけど一日以上に感じる。


 兎も居ないし、犬は穴から出てこないし、人が多いし、薬局のアルバイトは閉まっているから出来ないし、先ほどお詫びももらってウハウハだし、今日は寝るかな。




 翌朝、日本時間九時、ゲーム時間二十二時、うーんこれじゃ兎も狩れないし、バイトも出来ない。

 そうえいば、日の出は三時で店の営業時間は八時からって、ローラントさんが言ってたな、一旦ログアウトして家事でもしよう。



 日本時間十二時半、ゲーム時間五時、やっとログインできましたー! ログインすること自体がゲームじゃないのかなこれは? ログインできたし、昼も食べたし、お詫びも貰ったし、ちょっと気合いれて頑張っちゃうよー、ハッスルハッスル。


 リアルではご飯を食べたばっかりだけど、串焼きがあったので串焼きを食べる。何故か元気が出てくる気がする。

 しかし、ゲームの中にしては生活感があるな。昼間なら、店で買い物している人や、子供が走り回っていたりするが、それら皆NPCだ。無駄な作り込みが多い気がする。少し拘りを捨ててくれれば、もう少しログインとかどうにかなるんじゃないかな。


 

 南門を向かうとプレイヤーの声が聞こえる。


「人が多すぎて全然狩りが出来ない」


「北門の方は結構すいてたよ。ゴブリンやコボルトとかいて、敵が集団だからPT組んでないと無理だね」


「西門の方も空いていたけど犬ばっかりで不味いわー。あいつ何にも出さないし。兎もいるんだけど数が少ないんだよねえ」


 確かに南門の外を見るとうんざりするくらい人が多い。行ったことはないが、空いているという西門に向かう。


 確かに犬を狩っている人が見かけるが兎を狩っている人は少ない。


 数百m出たところで穴から兎が出てきた。コツが掴めたのか、昨日よりもうまく戦えている。兎の腹をさばいていると、更に穴から兎が出てきた。

 連戦はキツかったが、兎を捌いてポシェットにしまうと、更に別の兎が穴から出てくる。ドカッ、背中に痛みがはしる。振り返ると更に兎が二体いてフルボッコされて街に戻る。


 兎結構いるんだけど。称号の効果かな?これならレベル上げが進みそうだな。犬は何も出さないというし、兎を狩るぞー。


 ゲーム時間八時、う~ん兎を狩れるのは良いんだけど沸きすぎだよ。戦績は兎を十五匹倒して、十八回倒された。一度に三匹でる事が多くなかなか勝てない。

 とりあえず倒したらポシェットにしまうことにしているので、今のところ取りっぱぐれは無い。そのために倒されたとしても、兎の死体が勿体無いないからね。

 しかし、何故か今日は死んだら、ピンポン、ピンポンと音がする。そして周りのプレイヤーが残った兎を倒している。しかもお礼を言われる。


「兎おじさんありがとう(*'×'*)」

 私は兎を引き寄せるので、まずい狩場が美味しい狩場になっているようだ。

 しかし、このピンポンは仕様変更なのか? 死んだらピンポンなるゲームなのだろうか。

 なかなかレベルが上がらないが、意地でもレベルアップしてやる。



 ゲーム時間十時、日本時間十五時、流石に疲れた。未だにレベルが上がらない。今日のトータル戦績は三十匹倒して四十回倒された。心が折れそうです。

 フント薬局も開いている時間だしバイトしよう。途中で串焼き屋で兎串を食べる、おおー元気出てきたー。不思議だな、なんだろう兎への恨みだろうか。


 ローラントさんの指示を受けて仕事をこなしながら、色々なことを教えてもらった。ちなみに今忙しいのは、外国からの人[プレイヤー]が多数来ている関係で、ポーションや薬草などの需要が急激にあがっていて、在庫は多数あったが売り切れ寸前だそうです。

 お詫びに消耗品やテントがあったのは、この問題の回避策が含まれているのかも知れないな。


 簡単な手伝いでマールを貰えるので恐縮していたら、屋上にあがったり、草を並べたりするとMPの回復が遅くなるから、そのような手伝いでも助かるって、そういいながらローラントさんはソファーで寝そべっている。あれもMPを回復するためには重要なんだろう。お腹を撫でたら怒られるかな?


・薬草:生を十個で二百、毒消し草:生を十個で二百、期限はなし。


・お店の手伝い一日二時間で二千。干してある草の回収し新しい草を並べる。水汲み。瓶詰め。


・空いている時間はローラントさんの仕事の見学[これが基礎を学ぶ作業]


 戦いながら回収していた薬草:生と毒消し草:生を三十個ずつ納品し、バイト代を貰ったが、スキル代として二万を支払った。

 そしたら朝までに二万マールを稼いで来たので、無理をしたのではないかと心配され、お金は急がないから無理しないでだって。NPCの方が好感持てるってなんか残念だな。



 そろそろゲーム時間十四時、日本時間十七時だ、本当にクタクタだよ。ゲームするのもパワーが必要なんだね。とりあえず一旦ログアウトするために南門の外に出てテントを張る。


 ゲームを終わらせて、トイレに行き、CONNECTを見る。何も来ていない。……別にさみしくなんて無いです。

 夕飯とお風呂を済ませたところで、トムとハジメ等の板に記載があった。


「鈴木。ゲーム中はエコノミー症候群に注意してください。あと水分は多めに取ってこまめに休憩してくださいね」

 ハジメめ。まあ心配してくれるみたいだから、スポーツドリンクを飲みつつ返信をしておく。なんだかんだで人とのつながりがないと淋しいからね。


「ハジメ。鈴木にさんをつけろよ。いまスポーツドリンク飲みました。もうひと頑張りします」

 

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