第13話 三機合体。

 「今、なんて言ったの?」

 「これからは僕一人で戦うって言ったんだ。君を死なせるわけにはいかないからね」

 「中原君自身は死んでもいいってわけ?」

 「そういうことじゃない。苦しむのは僕一人で十分だって言っているだけさ」

 「なに、勝手なこと言っているの!」

 二人が言い争っている最中、天井から警報が鳴った。

 「敵が来た。いいかい、さっきも言った通り僕一人で戦うから君はここに居ろ」

 「ちょっと、待って!」

 成実が呼び止めるのも聞かず、凪は部屋から出て行った。


 「待って! あれ、扉が開かない?」

 ドアのスイッチを押したが、開かなかった。

 「ドアをロックしたのね」

 出られないという状況に置かれ、どうしたらいいのか分からず、部屋の中をうろうろすることしかできなかった。

 「外の様子だけでも見られれないかな」

 言ってから部屋にモニターが設置されていることを思い出し、スイッチを入れると、街中に設置されている無数の無人カメラからの映像が一斉に送られてきて、その中から敵を映している映像をタップしてフルサイズにした。

 

 敵は赤、青、黄からなる三機編成の戦闘機だったが、侵略者が送り込んでいるものだけに、ただの戦闘機とは思えなかった。

 画面を映像一覧状態に戻し、ゴーバインを映している画面をタップした。

 成実が迷っている間に、凪は合体完了させていたらしい。。

 三機は垂直飛行に移り、赤い飛行機を頂点に青、黄の順番に縦軸に並んで合体し、赤い巨大ロボットになって着地して、ゴーバインと真正面から対峙した。

 赤ロボは、額からレーザーを発射して先制攻撃を行い、ゴーバインが素早く右横飛びで回避すると頭を動かし、足元を狙って追撃していった。

 

 ゴーバインは対抗してアイビームを発射し、赤ロボがレーザーを撃ったまま目線を上げたことで、二つの光線がぶつかり合った。

 初めは拮抗していたが、次第にアイビームが押され始め、ゴーバインの顔面まで数メートルという距離になるとビームを止め、腰を屈めた低姿勢を取って、レーザーを回避しながら赤ロボにショルダータックルを直撃させた。

 たが、ビクともせず、両手を組み合わせた拳を背中に受けて地面に叩き付けられてしまった。

 「中原君、立って!」

 成実は、画面に向かって叫んだ。

 

 赤ロボが、踏み付けようと左足を振り下ろす直前で、左側転して攻撃を回避し、立ち上がるなり、ハンディバルカンと足のミサイルによる同時攻撃を行った。

 その攻撃をあっさり回避した赤いロボットは、両肩からトマホークを出して、高速回転させることで弾を防御しながら攻め込んできた。

 

 「早く武器を出して!」

 成実の言葉も空しく、ゴーバインは武器を出すどころか回避一辺倒で、発光ミサイルを発射することで距離を取って、近くの発射口からバイントマホークを発射することができた。

 しかし、受け取る前に追い詰められてしまい、手にすることなくトマホークは地面に落ちて、周辺の建物を破壊していった。

 「武器の発射にはスティックから手を離して画面操作しないといけない上に、相手の攻撃を避けながらだからタイミングを掴めないのね」

 成実は、凪の置かれている状況を察した。


 追い詰められたゴーバインは、赤ロボに背を向けるなり、走り出した。

 「まさか、逃げるつもり?」

 成実の言葉を証明するかのように、ゴーバインは敵に背を向け、キャタピラ走行行い、攻撃をギリギリでかわしながら逃走を続け、ある場所に着くなり左足で蹴る動作をした。

 そうして左足のつま先が蹴り上げたのは先程落としたバイントマホークで、両手で掴むなり、後ろを向いて赤ロボに切先を向けた。

 

 「ただ逃げているんじゃなくて、バイントマホークを拾う為だったのね」

 武器を手にしたゴーバインは、そのまま戦わず、トマホークをブーメランのように投げた。

 「せっかく拾ったのに、どうしてあんなことを?」

 赤ロボが、自身のトマホークで弾いている中、全発射口から武器が一斉に発射され、街中にバラまかられていった。

 「そうか、始めから武器を出しておけば、拾うだけで済むというわけね」

 ゴーバインは、右手でバインハンマー、左手でビームライフルを拾い、ライフルを撃ちながら赤いロボットに向かっていった。


 赤ロボが、トマホークでビームを防御している最中、ハンマーを振って胴体に巻き付け、動けなくしたところをアイビームとライフルによる同時攻撃を行った。

 しかし、赤ロボは三機に分離することで回避し、今度は水平飛行の状態で、黄色の戦闘機を頂点に青、赤の順番で合体し、飛び出した太い両腕に見合ったマッシヴな上半身に、下半身がタンクの黄色いロボットになった。


 ゴーバインは、近くにある遠距離武器を拾って攻撃したが、黄ロボが左腕の側面部を高速回転させることで発生させたエネルギーフィールドによって、全て無効化されてしまった。

 次に剣を二本拾って斬りかかるも、両手で受け止められた上にあっさりとヘシ折られていった。

 一旦距離を取ったゴーバインは、アイビームを発射したが、黄ロボがエネルギーフィールドを発生させた両腕を胸の前に持ってくることで防御されてしまった。

 ビームを止め、次の攻撃に移ろうとする中、黄ロボが腹部を開いて内部にある巨大なスクリューを高速回転させることで発生させた竜巻を前方に放射してきた。

 ゴーバインは避けようとしたが間に合わず、上空へ巻き上げられ、回転しながら地面に激突した。

 目の前にあるチェーンソーマグナムを拾おうとするも、キャタピラ走行で近付いて来る黄ロボが伸ばしてきた左前腕に右足を掴まれて、振り子のように左右に振られ、何回も地面に叩き付けられていった。

 

 その最中、左手で拾ったブーメランを投げるも、あてずっぽうな方向へ飛んでいってしまった。 

 「あの状況じゃ、外れても仕方ないよね」

 成実の言葉に反して、返ってきたブーメランは黄ロボの背後に迫ってきた。

 だが、当たる直前で黄ロボは、下半身を分離して避け、その隙を狙ったゴーバインが、バインジャベリンを持って飛び掛かったが、今度は胴体を分離して、青い飛行機を飛ばすことで、弾き飛ばした。 

 

 分離した三機は上昇すると、青い飛行機を真ん中に右側に赤、左側に黄という形に平行に並んで合体した。

 そうして左右に色の異なる大きな翼を生やし、前方に頭、後方に足のあるロボットと爆撃機の中間のような形態になった。

 そうして高速飛行しながら翼からミサイル、腹部から爆弾、両目からはレーザーを発射したが、ゴーバインではなく街中を破壊して、落ちている武器を瓦礫で覆っていった。

 

 それによってカメラが破壊され、映像が途切れていく中、一時的に部屋の電気も消えるたが、すぐに復旧した。

 「あの攻撃で主電源がやられて、予備電源に切り替わったんだ。何も映さないじゃない。どうしたのよ?」

 モニターは真っ黒なまま何も映さず、操作にも反応しなかった。

 「そうか、さっきの敵ロボットの攻撃でカメラが全部ダメになったんだ。このままじゃ、中原君とゴーバインがやられちゃう。どうすれば・・・・・・・・」

 成実は、モニターの前でうろうろすることしかできなかった。

 「電源が一度落ちているのなら、ロックも解除されているかも」

 祈るような気持ちで、ドアのスイッチを押したが、開かなかった。

 

 「もう、変なところで優秀なんだから、どうにかしてここから出る方法は無いかしら」

 頭を抱えて部屋を行ったり来たりしている中、ベッドの脇に置かれているブレスレットに目が止まった。

 「そうだ。これで連絡を取ってみよう。中原君、聞こえる?」

 通信を送ってみたが、返事は返ってこなかった。

 「やっぱりダメか、ここから出られる方法さえあれば、そうだわ。ブレスレットから出るビームで配線を焼き切れば出られるかも」

 ブレスレットを持って扉の前に行き、配電盤に狙いを定め、黄色のボタンを押すと、表示盤からボタンと同じ黄色のビームが出て、目標を焼いていった。

 完全に焼いたところでビームを止め、ブレスレットを右手に付けて、扉の前に行くとこれまでと同じく開くことはなかったが、手で押すと動いたので、手動でこじ開け、外に出ると真っ先にエレベーターに向かった。

 

 ここもロックされているのかと思い、スイッチを押したが問題無く開き、中に乗って最下層まで降りて行った。  

 格納庫に来て中に入ったが、何も無かった。

 「予備のマシンとかは無いのかしら?」

 格納庫の隅にある端末のスイッチを入れて検索した。

 「スペアパーツしかありません」

 画面に返答メッセージが表示された。

 「スペアパーツだけ、それならパーツを組み立てる時間は?」

 「一機に付き、五時間かかります」

 「それじゃあ、間に合わないじゃない!」

 焦りと怒りのあまりにモニターを強く叩いてしまった。

 

 「そうだ。小型機があるんだっけ。発進できる?」

 「発射口が破壊されている為、発進できません」

 「そうだわ。まだバインウィングが残っているわ。地上絵付近は無傷よね」

 「損害はありません」

 「それなら行けるわ」

 成実は、一番左端のバインウィングの緊急搭乗用のパイロットシートに座って、移動用のスイッチを押したが、何の反応も無かった。

 

 「なによ、どうしたのよ?!」

 シートから離れて、端末に問い合わせてみると

 「あなたのアクセス権は無効です」という解答が表示された。

 「なんで、こんなところだけ拒否権が生きているのよ。これじゃあ自分の手で動かすしかないじゃない」

 シートに戻った成実は、両手で押してみたが、ストッパーにがっちり固定されていて、ビクともしなかった。

 「こうなったら」

 成実は、ブレスレットのビームでストッパーを焼き切った後、シートに座るなり両足で床をおもいっきり蹴って、強引に通路の中へ入った。

 

 シートはジェットコースター並みの猛烈な勢いよって通路を下り、成実は振り落とされないように無我夢中でスティックに掴まったが、登り方向に差し掛かったところで止まってしまった。

 「手で押さないと無理かな」

 成実は、通路に足を付けて、シートを押そうとしたが、かなりの重さで押し上げることはできなかった。


 「後は自分で進まないとダメみたいね」

 自分の足で通路を上がっていき、頂上に達すると急な下り坂になった為に踏み止まることもできず転げ落ちていき、そこかしこに体をぶつけ、止まった時には体中痣だらけになっていた。

 「・・・・・・・こんなところで止まってなんかいられない」

 体を起こし、全身の痛みに耐えながら通路を進んで行った。

 「もうすぐだ・・・・・・・・・・」

 前方に、小さな明かりが見えてくると、痛みも忘れてひたすら足を動かし、通路から飛び出して目的のバインウィングのコックピットに入れた時には、思わず安堵のため息が漏れた。

 

 「お願い、反応して」

 祈りを込めてブレスレットを差し込み口に入れると、計器類に灯りが付き、一瞬の震えと共に起動状態に入った。

 「これならいける」

 シートに座り直して、キャノピーを閉じる一方、ハッチが開く様子は無かった。

 「電源が落ちたせいで開かないんだ。壊して出るしかないよね」

 レバーに手をかけ、トリガーを引き、発射したミサイルによってハッチを壊し、降りかかってきた爆風が晴れていくと、進むべき世界の明かりが差し込んできて、機体の機首を照らしていった

 それからフットペダルを強く踏んで、ジェット噴射を最大にして、ハッチ周辺の瓦礫を弾き飛ばして外に飛び出し、自分が戦うべき戦場へと赴いたのだった。


 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る