第6話 雨

 チリリリリリ

 アラームの音だ。あ、と、これは――本。携帯、携帯――あった。

 ウトウトとアラームを消してもまた眠りそうになる。そこにパラパラと雨の音だろうか? それとも葵君の水やりの音?

 眠たい体を起こしてカーテンを開ける。雨の音だった。小さな庭に雨が降る様子もまたいいなあ。なんて見てたら。雨戸を開ける葵君の姿があった。雨戸を開けて伸びをしている。その姿もカッコいいな。って! もう着替えてるじゃない。慌ててカーテンを閉めて着替える。お布団を畳み、押し入れへ布団を入れる。押し入れって収納力高いな。母が服はこれにと押し入れの寸法の服いれを買って送ってくれていた。あとはハンガーラックと。和室なので雰囲気壊れるがないと困るので助かった。たためるものは押し入れの衣装箱の中にいれてあとはハンガーラックへ。服はこれでほとんど終わり。じゃない!! 早く顔洗いに行かないと。

 慌てて部屋を出て洗面台へと向かう。そこには歯を磨いてる葵君がいた。あ、慌てていたから葵君の姿を確認していなかった。てっきり葵君はまだ居間にいるかと思ってた。


「使って」


 と横によけてくれた。まずはあんまり醜態さらさない髪をブラッシングすることからしてみる。後ろによけて髪をとかしていると葵君はうがいをして顔を洗いタオルで拭いてる。そんな姿……なんだか可愛い姿。


「タオルここ置いとくから」

「うん」


 気づけば髪をとかしながらずっと葵君を見つめていた。バレたかな? 恥ずかしそうにして去って行ったし。とりあえず顔を洗ってタオルで拭く。

 部屋にブラシをなおしに行きカバンにしまう。カーテンが閉めっぱなしだったから開ける。

 キッチンに行くとパンを焼いて自分の朝ごはんを作っている葵君がいた。


「おはよう」


 さっきも会ったけど何も言えなくて返事しかできなかった。挨拶し直す。


「おはよう。パン焼いてるから」

「ありがとう。今度からは自分でするから気を使わないでね」

「ん。わかった」



 こうして荷物を整理しにくるという二泊三日は終わりの時を迎えた。洗い物をして部屋に掃除機をかけたら、そろそろいい時間になった。



「駅まで送らなくていい? 雨だし」

「いいよー。あ、でも、雨――傘か」

「そ、傘もあるしね。送るよ」


 送ってもらって正解だった。なにせ、迷いながら来た道だったのと雨で雰囲気が変わってしまったので、道がわからなくなってしまった。葵君は簡単な駅までの道を教えてくれて、また道々思い出話をしている。駅の方が開発が進んでるから、こっちの方は本当にすっかり変わってしまったと、少しさみしげに言っていた。

 駅についたら切符を買う私の横で、葵君は見送りの切符まで購入していた。


「いいのにー! 」

「いいじゃない。こういうの一回やってみたかったんだ」

「そうなの? 」

「ああ」


 傘を葵君に渡して一緒に電車を待つ。2週間会わないだけで見送りするなんて、本当に暇なのか、やりたかっただけなのか。

 電車が来た。電車に乗り込み振り返る。


「じゃあまたね、葵君」

「じゃあまた」


 プシューと電車の扉が閉まる。

 私は小さく手を振る。葵君も振り返す。これじゃあ、まるで恋人同士のようじゃない! そういえば行きも尚也に見送られた、小さくなるまで大きく手を振っていた尚也はどういうつもりだったんだろう。人の気も知らないで。




 帰りの電車の中でメールが入った。尚也から『着くのは何時? 』 というメール。なんで今になって、こうかまって来るんだろう。バカ!! でもメールし返す。『十一時』だと。すぐに返事が来る。『迎えに行くから』と。尚也のバカー!

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