君の知らない物語~月が綺麗だね~

ナオスティン

第1話「代打、俺?」

高校を卒業して九十九里の地元を離れ、社会人としてようやく一人前になった頃。


毎年夏に地元に帰っては、高校時代すごく好きだった彼女と行った花火大会を見に行っていた。


もしかしたら彼女に会えるかもと小さな期待をしながら・・


・・・・・


あれは高校3年の夏、まだ梅雨のジメジメした暑さが残る県営球場のバッターボックスに俺は立っていた。


3年間マジメに1日も休まず練習してきた。


でもレギュラーにはなれなかった。


生まれつきのセンスのなさは、ちょっとの頑張りではなかなか埋まらないものらしい。


それでも続けられたのは、根っからの野球好きってことと、マネージャーで幼なじみの真美がいたからだ。


彼女と俺は家が隣同士だった。

小2の時親の転勤で引っ越したばかりの俺は、よく近所の年長生にからかわれてた。


ある時、いつものように俺をからかっていたその年長生たちに彼女が「年下いじめてカッコ悪い!」と一喝してから、まったくからかわれなくなった。


彼女は小さい頃から可愛らしく、近所の小さなアイドルだったからだ。


その時から彼女には頭が上がらなく、また気持ちも言えないでいた。


そんな彼女がスコアラーでベンチで見ている。


ここは絶対打たなきゃ!


・・・・・


回は6回の裏、0ー1のビハインド。

たった1点差だが、ここまでチャンスらしいチャンスを作れず、相手ピッチャーの速球派浦田の前に手も足も出ない状態・・


そんな浦田がはじめて先頭打者にフォアボールを出した!


俺達は皆、次の打者の望月がバントで送って後続の打者に賭けるというセオリー通りの作戦を予想し、後続の打者の蜂谷と佐久間に無言のエールを送っていた。


そんな時、監督がおもむろに立ち上がる。


巧打の望月に代打?


皆が驚く暇もなく告げられた代打はなんと俺だった!



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