第8萌 ツインズフェイク(前編)

私の名前は草刈智代、モエッティ虎屋町支部長

正陽徐しょうようじょレーラの正体は本名山田昌江、30歳のロリBBAだった・・・

神のリアル壁ドンで何とか退ける事が出来たけど、なかなかの

強敵だったわね。

それにしても神は彼女の必殺技の効果とは言え、デレデレしたり

私に酷い事言ったのよね。

もう、この物語の主人公は私に変更って事でいいかな?

ってなわけで、一度私たちは家に帰って休んで、捜索二日目に突入したわ。


***


時間は朝の9時、昨日はなんだかんだで結構疲れたのですぐに寝てしまった。

色々と歩き回ったり変な人たちにたくさん会ったし。

やっぱり自分の部屋が一番落ち着くわね。

私の部屋にはもちろんB・L本専用の棚がある、一体何冊あるんだろうか・・・

もう数えるのも面倒で。

自分でも同人誌は今まで100冊以上描いた、毎回コミサに出展してる。

でも、もし神を部屋に呼ぶことになったらどうしよう?

さすがに引くわよね、いや絶対に引くわ。

そんな事を考えていると携帯の着信、神からだ!

神からの着信はすぐに分かるように着信音を変えているの。


「もしもし、ともよん?起きてた?」

神の声が受話器から聞こえてくる、あぁこの声も好き。


「うん、もう起きてたよ。夢に神が出てきて・・・嬉しかった」

もちろん、嘘だけど。


「早く、次の手がかりを探しに行こう!

何としてもこの春休み中に父さんを探し出すんだ!」


全然、私の話を聞いてないのね。でも、そんなお茶目な所も、好き。


「うん!早速行きましょう!」


「今から行くから準備してて!」


「わかった」


ここで電話が切れる。神が来る前に準備しなきゃね。

と思ったのも束の間、自宅の呼び鈴が鳴る。

神?それにしては早過ぎるような来もするけど。

入り口まで行って、玄関の戸を開けるとそこには神が立っていた。

さすがの早さに驚いた。


「ごめん、驚かせちゃったかな?」


「うん、ちょっと来るの早かったから驚いちゃって」


「ごめん、ごめん。本当は家のすぐそばにいたんだ、サプライズってやつさ!」


なんか神らしくないけど・・・私を単純に驚かせたかっただけなのね。可愛い。


「早くオヤジを探しに行こう!」


「うん、分かった!」

準備をして、神に連れられて外へ出かける。

どうも街の中心街に向かってるみたいだ。

私たちが住んでいる街は決して大都会ってわけじゃないけど

それなりに大きな駅があり、その周辺はたくさんのお店が出ている。

大手チェーンの飲食店なんかは大体ある、典型的な地方都市といった感じだ。

そんな事を思ってる間も神は無言で歩き続けてる。

横顔を見る、どこから見てもカッコいい。


「ねぇ、神?何か手がかりを掴んだの?」


「あぁ、駅前でモエッティの情報をくれる人間と待ち合わせしている」


「そうなんだ・・・で、かもる君は一緒じゃないの?」


「かもる?あぁ、あいつはもういいよ。一緒にいても何の役に立たないしな」


「そう・・・」

確かにあの二次元大好き豚野郎は役には立たないけど

神ってこんな冷たい事言う人だったっけ?

と考えてる間に来たことがない暗い裏路地に神が入っていく。


「ねぇ、神・・・どんどん人気ひとけがなくなって行くんだけど」


「ここを抜けた所でその人と待ち合わせしてるんだ」


やっぱり何か変、いつもの神じゃないような気がする。

すると神が急に立ち止まってこちらを向く。


「ねぇ、ともよん」


ドキッとするような凄く真剣な眼差し


「どうしたの?」


「俺たちって、もう付き合って結構経つよね?」


「う、うん3ヶ月位かな、それがどうしたの?」

そう言った瞬間に神が私の方に腕を伸ばして壁ドンをして来た!


「ね?そろそろ、いいだろ?俺たちもそんな仲になっても」


「まだ心の準備が・・・」

動揺を隠せない、神の顔がもの凄く近い。私ったら、こんな時にどんな顔したら

いいのか分からない!そして、私たちまだ中学生なのよ!ダメよ、ダメダメ!


「さぁ、早く目を瞑って、優しくするから」


どうして?どうしてなの?神が私に顎クイまでして来た

壁ドンと顎クイのコラボ、好きな人にやられて落ちない子はいないわ。

あぁ、神。もう、どうにでもして・・・


「ちょっと待ったァーーーーーー!!!」


「な、何?」


「こんな昼間から何やってんだよ!」


振り返ると少し距離を置いて神と豚野郎が立っていた。

神は確か私の目の前に・・・いや、いる!神が2人?双子だったっけ?


「ともよん!一体どう言う事なんだ!?」


「チッ!邪魔が入ったか、もう少しだったのに」


え?どういうこと?もしかして、こっちが偽者?


「俺以外の男となぜそんな事をしているんだ!」


「三次元女はこれだから嫌なんだ、ヒカルたんは浮気なんかしないぞ!」


イラッとする言葉を吐く豚野郎、覚えておけ。

とにかく全く意味が分からない、私にはどちらも神にしか見えない。

私は本当におかしくなっちゃったの?


「お前は一体何者だ!?」


「バレちゃ仕方がない。俺はモエッティ

第3の刺客『双月そうげつアキラ』だ!」


モエッティの刺客!?もしかして、前の神みたいに何か催眠術のようなものに

掛けられてるって事?


「双月アキラ・・・やはりモエッティの刺客か、ともよんをたぶらかしたな!」


「たぶらかしただなんて人聞きの悪い。ただ、勝手にこの子が着いて来ただけさ

それにしても良くこの場所が分かったな。」


「ともよんの家に行ってもともよんがいない、そして、かもるが見知らぬ男と

一緒にいるともよんを見つけて俺に報告してくれたんだ!」


「これは勲章ものカモ」


やっぱり早く来すぎだと思ったのよね、でも豚野郎には絶対感謝なんか

しないんだから。


「ふん、運のいい奴らだ・・・

俺の必殺技『ツインズフェイク』は掛けた相手の意中の人間になりきれる。

他人から見ても姿は変わっていないが、かけた人間にはその人にしか見えない」


「つまり、今のともよんにはお前も俺に見えていると言う事か」


「そう言う事だ」


何そのご都合主義な必殺技は!!

でも、今でも私には彼が神にしか見えない。

技がまだ継続しているって事なのね。

でも、2人の神に囲まれるなんてなんて素敵なのかしら。

豚野郎は視界から消しておかなきゃ。


「はっ!つまり、僕が技をかけてもらえればあいつがヒカルたんに見えると言う事?

うーん、かもるの馬鹿!馬鹿!あいつは男じゃないか!!」


「かもる、今はそんな事言ってる場合じゃない!

とにかく早くともよんを開放しろ! 」


ホントにあの人、どうしようもない。


「はは、そんなに簡単に開放するわけがないだろう!

とりあえず彼女は俺が預かる!!

取り返したければモエッティ辰巳たつみ支部まで来い!」


そう言うと、神に見える双月アキラに手を引っ張られる。

凄い力で対抗が出来ない。


「ちょ、待て!!」


「三次元女、まさかの誘拐カモ」


「神ぃぃぃ!!!」


追ってくる二人とは全くスピードが違う。

でも、私には神が駆け落ちしてくれてるような錯覚に陥る。

とにかく神、助けに来てくれる事、待ってる。

次回に続くわ。

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