第27話 素直過ぎ

 さて、安心出来る日々など来ない! 橘だけがうれしい特典の日々が終われば、これからが本番とばかりに榊の案が出る。私の案を受け入れたのはこれのお試しのためだったのね!




 また来たよ。コスプレ。押すよね。誰がなんだろう。

 今回はなりきりコンテストってこれってコスプレだよね? 私の被害妄想?


「それ参加する人いるの?」

「各クラス男女一名ずつ抽選だ」


 そのセリフ前にも聞いたよ。


「今回は先生から景品が出る」


 ん? 先生が? やっぱり先生の好みなのかなコスプレ?


「景品って?」

「男女別で一位図書券一万円、二位五千円、三位三千円だ」


 微妙な景品だな。


「それってどこかで見せるんだよね?」


 ああ、もう柏木が食いついてる。


「体育館で参加者はみんなの前で披露してもらう。他の生徒は投票用紙に番号を書いてもらって投票してもらう。男女それぞれに色分けして今度は一人男女の投票用紙二枚の投票となる」


 めっちゃ前の投票の経験を活かしてるね。あの名前が書かれた投票用紙にうんざりしたもんね。

 またもやコスプレ。嫌な予感がするけど。



 抽選しようとしてなんとコスプレに目覚めたのか、見ていてやりたくなったのか立候補が出てくるクラスも多数あった。みんな慣れてきてるねコスプレに。確実に。



 当日までに他の参加者にわからないように学校にあるコスプレグッズで選ぶもよし、手作りもよし、って事で個別に女子は私が、男子は橘が受け持つ。榊は当日のことやら投票箱やら飾り付けや進行などに、柏木は投票用紙作りやポスターやエントリーした人について仮装するものをまとめたりとなんだか一番忙しい毎日を過ごしている。




 体育祭の人任せや文化祭の自分達のところだけ、なんて簡単にはいかない。もちろん人出が足りないところはクラブで専門に活動している放送部やパソコン部や手芸部なんかも手伝ってもらい、またまた学級委員にも手伝ってもらう。

 人出が足りてないんですが、榊? まあ、あの女子たちがいても専門の部がやってくれる事のほうが大きいけど。いつもは暇で雑談ばかりなのも確かだし。




 そうして、やってきた本番当日。昨日のうちに更衣室にコスプレグッズは移動済み。残りの足りないものは本人が持参して来る。なので私がするのは誘導だけ。放送部が司会進行してくれるので番号順に待機させるのみ。良かった。榊の趣味を持ち込まれずに済んだ。




 なのに! なんで生徒会室の前でにこやかに袋を持っているんだ榊!


「じゃあ、あの更衣室の鍵は?」


 手を差し出すとなぜか私に袋を渡す榊。袋の中を覗くと……メイド服だね。必要ないし。


「鍵!」

「いいじゃない?」


 鍵を渡しながら言う。なにがいいんだ!


「よくない。メイド服もう二回も着たし」

「わかった」


 あっさり私の手から袋を取る榊。意外だな。まあ、よかった。あの格好で廊下をウロウロするのは絶対変だ!


「じゃあ、いってくるね」

「うん」


 なんだか素直過ぎて怖いな。

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