第7話 『偶然?』

 「「はぁ…はぁ………」」


 鬱蒼うっそうと生い茂る木々の中を俺達は歩いていた、この世界で起きてからおよそ二時間、ほとんど足を止めずに歩き続けているものの景色が変わる気配がしない。


 なにも成果が得られなかったという訳ではなかった。あの巨大キノコを触ると弾力性があり、バランスボールより少し硬いくらいだったので面白かった。


 ……うん、それだけである。何故か動物どころか虫一匹会うこともなくただ歩き続けていた。すると疲れたのか神生が話しかけてきた。


 「……ね、ねぇ、ちょっと休まない?」


 無理もない、これだけ歩いたのだ、俺だって疲れた。特に反論する理由もないので素直に同意することとする。

 

 「…そうだな、少し休もう」


 そう言って近くのキノコに腰掛ける俺達、どうやらもう普通の感覚ではなくなってしまったようである、無念。


 「喉渇いたー…」

 「我慢しろ…うぅ……」


 これだけの距離を歩いたのだ、少し座った程度では疲れが取れるはずもない、それにお互い喉が渇いた、家を出た時から何も飲んでいないのだ。俺は無駄な努力とは知りながらも何かないかカバンの中を探す。


 「……お?」

 「ん? どうしたの?」


 カバンの中身をあさり続けていると俺の求めていたものであろうものを見つけた。そう、飲料水である。しかもご丁寧に二本も。


 「水あった」

 「え!? ちょうだい!」


 こいつは遠慮のえの字も知らないのかと思いつつペットボトルを一本渡す。感謝しろよ?


 「ん……ぷっはぁぁぁ! 生き返る!!」

 「そうかお前は死んでたのか」

 「違いますぅぅ、こういう表現ですぅー」

 「うわー気持ち悪いわぁー『じぃ』みてぇ」

 「は? お爺ちゃんの事そんな風に言うとか最低」

 「『ゴキブリ』みたいって意味ですけど何か?」

 「んだとゴラァ!!」


 と、まぁこんな感じでお互い元気になったのを確認すると再び歩き出した。


 永遠にこの風景が続くものだと思っていたが歩き出して十分程すると異変が現れた。


 「……何か音がしないか?」

 「音? …あ、ほんとだ……なんだろう」


 音のする方向へ耳を傾けてみると、


 コーン、コーン……


 と、木を叩くような音が聞こえた。そして更に聞き続けると……


 「お………れるぞ………ろ~……」

 「「!!?」」


 確実に獣の鳴き声とは違う人の声が聞こえた、俺と神生は顔を見合わせると声のする方向へ走り始めた。



 あっ滑った





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