第25話ビーストハンター 第3話 「帰らざる波止場 」(4)

 ツクモたちが待たせてあったビークルまで帰ると、ヒジリが運転席の窓から身を乗り出して言った。

「とっつあん!ウズメ姉さんから耳寄りな情報がきてまっせ~」

「何っ!どんな情報だ?」

「密告者の呉建勝には、陳栄達って可愛がっとる弟分がおったらしいんやわ…ほんで、そいつの居所が分かったそうや」

「そうか。じゃぁ、そいつをつついてみよう…呉建勝の足取りが掴めるかも知れん」

「俺とシュンは、呉建勝を追っているジャーダンのメンバーを当ってみる」ジョーが言った。

「おぅっ!頼んだぞ」ツクモはジョーに言った。

 ジョーとシュンは、止めてあった武装サイドカーに跨ってそのまま走り去って行った。


 その頃、自分のアパートに建勝と千恵子を残し、栄達は何食わぬ顔をして中華料理店のバイトにきていた。

 彼は福建に両親と妹の小芳シーファンを残し、同郷の呉建勝を頼って日本に留学してきていた。

 栄達が可愛がっていた小芳は、数年前に目の病に犯された…目が見えるように手術するには莫大なお金が必要だった。

 彼は留学の傍ら、何とか小芳の手術費用を稼ごうと懸命にアルバイトをしたが、必要なお金は容易には貯まらなかった。

 日本に来た当初、栄達は建勝と一緒の所で働きたいと言った…だが、組織の内情を知る建勝は断固としてそれを断った。

「お前はどんなに苦しくても堅気の仕事をして稼げ」建勝はそう言って栄達が組織に関る事を許さなかった。


 栄達が中華料理店の厨房で皿洗いをしていると、黒い服を着た男が入って来た。

「へい、らっしゃ~い!」店の主人が男に挨拶をした。

「この店に陳栄達って人はいるかね?」男は入り口に立ったまま主人に言った。

「何かあいつにご用でも?」主人は男に尋ねた。

「ちょっと届け物を頼まれたもんでね」男はそう答えた。

「お~ぃ、栄達…お客さんだぞ~」主人は厨房にいる栄達に告げた。

 栄達は皿洗いを止めて厨房から出てきて言った。

「あのぅ…どちら様でしょうか?」栄達は見知らぬ男を見て怪訝そうに言った。

「何の用だか分かるだろう…表で待ってるぞ」男はそう言うと店の外に出て行った。

「大将。ちょっと席を外していいですか?」栄達は店の主人に断りを入れた。

「あぁ、構わんよ」主人は言った。

 店の外に一歩出た途端に、栄達は三人の黒い服を着た男たちに囲まれた。

「俺たちが何を聞きたいか、もう分かってるだろう」一人の男が凄んだように栄達に言った。

「兄貴の事か?…俺は知らねぇよ」栄達は何とか言い逃れをしようと思った。

「とぼけんじゃねぇっ!」男たちの一人が語気を荒げて言った。

 すると、リーダー格らしい一人の男がスーツの内ポケットに手を入れた。

「俺を殺すのか?」てっきり撃たれると思った栄達はビビリながら言った。


~続く~

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