第4話 ケーキ屋さんの新メニュー

『お~い…探偵達、ケーキ屋さんから相談があるんだって』


 月の道をポロンコロンと駆けてく2匹。

「今日はナニが食べれるかな~」

 クロさんは楽しそうです。

「僕は、マグロショートがいいな」

 チョビさんがクロさんを抜いていきます。

「待ってよチョビさん~」


『月光商店街』は雪景色。

「うわぁ~今日は雪の日なんだね」

「うん…」


 月の街では、季節は日替わりです。

 天気も、季節もバラバラ。


 サクッサクッと雪道を歩きます。

 振り返ると足跡が追いかけてきます。


「面白いね」

 チョビさんが道を転がる様に駆け出します。

「ここだね」

 チョビさんがケーキ屋の前で待ちきれないと言った様子でクロさんを急かします。


「あ~探偵さんだね、実は悩んでいてね…相談にのってほしいんだ」

「任せてください」

 チョビさんが胸を張ります。

「まだ、何も聞いてないのに…」

 クロさんが呆れた顔でチョビさんを見ます。


「相談っていうのはね…靴屋さんの猫が最近ケーキを貰いに来ないんだよ、ちょっと様子を見てきてくれないか?」


 とにかく、靴屋さんに向かいます。

「ちょうどいいや…靴を貰おうよ」

 クロさんが言います。

「そうだね…コレなんかいいよ、暖かそうだ」

 赤いブーツを履きだすチョビさん。

「サンタみたいだね」

 クロさんが笑います。


「いらっしゃいませ」

 店の奥から、真っ白い猫が顔を出します。

「このひとだね」

「そうだね」

 2匹は小声で話します。


「あのね…お姉さんケーキ好き?」

 チョビさんが聞きます。

「えっ…好きだけど…」

「何ケーキが好き?」

「そうね…うん…でも…ケーキより、クッキーのほうが好きかな」

「クッキー?」

「最近はケーキより、クッキーばかり食べてるわ」

 クロさんが困った顔をしました。


「ありがとうございました」

 2匹はブーツを貰って、店を出ます。


 ケーキ屋さんに

「お姉さんはクッキーが好きなんだって」

 チョビさんがケーキ屋さんに伝えます。


 う~んと腕組みをして…ケーキ屋さんは

「よし!クッキーを作るぞ!」

「えっ?」

 3匹は沢山のクッキーを焼いては食べ…焼いては食べ…さすがに飽きてきました。

「僕…もうクッキー見たくない…」

 チョビさんがふて腐れてます。

「案外…飽きるものだね~」

「沢山食べてもらうにはどうしたらいいかな?」

 う~んと3人は腕組みをして考えます。

 チョビさんが割れたクッキーを見て

「コレ、ねずみ、みたいだね」

 確かに割れたクッキーは、色々なモノに見えます。

「それだ!」

 クロさんが閃いたようです。


 ☆☆☆☆

「はい、コレ、ケーキ屋さんがお姉さんにって、今度、クッキーも始めますから、ぜひ来てくださいって」

 箱を開けると…。

 小さなクッキーがぎっしりと詰まっています。

 クッキーは『魚』や『ねずみ』、『鳥』…猫が興味を惹かれそうな形をしています。

「まぁ…すてきなクッキーね、ありがとう…」


 ☆☆☆☆

「喜んでいたよ、お姉さん」

「ホントかい」

「また貰いに来るってさ、ケーキもね」


 数日後、2匹がケーキ屋さんを訪ねると、少しふっくらとしたお姉さんとケーキ屋さんが仲よくケーキとクッキーを食べていました。

「ケーキ屋さんは、靴屋さんが好きなのかな~」

 チョビさんが呟きます。

「…今頃…気づいたの?」

 クロさんが呆れています。


 ケーキ屋さんの『猫大好きクッキー』は大人気になりました。

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