第2話 蝉と少年

 興味のある方は見てください。決してきもちのいいものではありません。蝉と少年の奇妙な話。



ミーンミンミンミンミン、ミーンミンミン


「…………っ……うるせーーー」


 ここで俺は寝がえりをうつ


「それに…………あっつ…………」


 夏真っ盛り! 昼寝をしようと思っていたんだができるもんじゃねーな。

 俺は健二! 高校1年生!


 飛び起き部屋を見回していると


「やっぱ入って来てたのか……通りでうるさいはずだわ」


 蝉が一匹部屋に入り込んでいた。鳴き声から分かるようにミンミンゼミだ。

立ち上がりそーっと蝉に近寄っていき…………

 捕まえた! よっしゃ! と心の中でつぶやきそこら辺にあった虫かごに入れておく。

 俺はごく普通の高校生だ。夏はアイスを食べ、外で元気に運動をすることを良しとするごくごく普通の高校生だ。だが今年の俺はある欲求と戦っている。


「…………蝉って、うまそうだよな…………」


 虫かごを見ておもむろに呟いてしまった。

 そう、ある欲求とは蝉を食べてみたいということ。蝉が美味しそうに見えて仕方ないのである。


「いやいや、おかしいだろ蝉をうまそうに思うなんて…………」


 そこでまた考える。


 …………でも蜂とかイナゴって食えるんだよなー


 いやいや、やっぱりどう考えてもおかしい! 蝉がうまいはずないだろう!!

 おかしいといえばつい二週間前、友達が豚小屋に美人がいるって言っていたな。どこにもいないのにいるって言いはってんの。あいつのこと気味悪くなって帰ってしまいそれから話してないけど…………。


「俺も変人だよな……蝉をうまそうって思うなんて…………。よし、次会ったら普通に話しかけよう!」


 勝手な決意をする。だめだ、虫かごの蝉を見ているとやはりうまそうと思ってしまう。逃がすか?

 こちらは決心できなかった。


「いや、後ででいいよな…………。外でも歩いて気分を落ち着かせよう!」


 炎天下のなかよく外にでるなと思われるかもしれないが俺の勝手だ! 部屋にいると食べてみたくなるんだからしょうがないだろう!!

 外といっても庭を歩くだけである。俺ん家の庭は結構広いからな。プラプラ歩いているとやはり暑い…………。涼しさを求め木陰に入ると俺はあるものを見つけてしまう。


「……蝉の……抜け殻…………」


 やばーーーい!! うまそうだ!! 蝉本体にはかなわないが十分魅力的だ。どうする? 食べてみるか? やっぱおかしい?


「抜け殻なら、そんな変じゃないよな…………」


 心が決まった瞬間である。

 俺は抜け殻を木の幹から取って口に、運んだ…………


「!!!!!うまい!!!!!」


 なんという香ばしさ!! 口の中に一瞬にして広がる旨み!! 今まで食べたことのない新食感!!

 ダメだ……この味を知ってしまった…………。だったらいったい蝉本体の味は?


 そう考えてしまう。考えた時にはもう俺の身体は動いていた。全速力で部屋へと戻る。

 ドアを開け、サンダルを脱ぎ、自分の部屋の扉を開ける。この一挙一動がもどかしい。


 やっと自室にたどり着く。すぐそこにある虫かご。躊躇なくそれを開ける俺。









 蝉の命は一週間というのは本当だろうか?






 ミーンミンミン……ギ、ギィ!!……………………クチャクチャクチャ…………ゴックン…………

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