第2話 どんぶり感情

 もしかして、イタズラなのかな。でも誰が何のために? 高校入学早々のワタシに? それも手紙が届いたのは入学式前の朝だよ。


 仮に同じ中学の誰かが手紙をくれたんだとしても、このタイミングではないと思う。何か変だ。「星の人」っていうのは、おそらく送り先の人の名前なんだろうけど、本名じゃないだろうし。暗号とかなのかな。


 まさか本当に、どこか別の星に住む人が、ワタシのことを見ていて、手紙を送ってくれたんだったりして! キャーーー! イヤーーー!(笑)。

 嬉しいような、恥ずかしいような、怖いような。うん、現時点では怖いかな。あんなに嬉しそうだった(第1話参照)くせにね。


 色々妄想を膨らませたところで、お腹は空いたので、夕飯を食べに食卓へ向かう。お昼ご飯はハンバーグとワタシ的に豪華だったけど、夕飯も負けていない。何とミートボール丼だ。このミートボール丼はハッキリ言って手抜き料理みたいなもの。というのも、このミートボールはすでに調理された状態で袋に入っていて、それをお湯で温めご飯にかけるだけ。それでもミートボールのタレがご飯に染み込んでめちゃめちゃ美味しい。


「いただきまーす」


 四角いテーブルを家族四人で囲む。お母さんとおババ。そして仕事から帰ってきた、一家の大黒柱であり、この物語では存在感の薄いお父さん。スーツの上着を脱いで、白いワイシャツ姿。いつもお疲れさま。


「ねぇ、マァちゃん。あの手紙のことなんだけど」

「エ、ハァ? ナ、ナンダッテ?」

「ほら、今朝届いた手紙何だったの」

「あ、あぁ、あれね。誰かのイタズラみたい。もう、読む前に破いて燃やしちゃった」

「燃やした!? 燃やすなんて危ないじゃない。お父さんも何とか言ってやってよ」

「ツッコむところはそこじゃないんじゃないか。まず、読む前に何で誰かのイタズラってわかるのか、だよ」


 お父さんはお母さんと違って知的だ。爽やかな短髪で、メガネをかけている。そしてお父さんは続けて、


「まぁ年頃なんだし、手紙の内容を聞いたりするのは止そう。脅迫の手紙とかじゃない限りな、ハハ」


 か、かっこいい。でもあと出番一回くらいかもしれない。お母さんは少しムッとした顔をしつつ、納得したようで、黙ってミートボールをかきこんだ。おババはこの間、柔らかな笑みを浮かべながら細い、シワの入った指で箸を上手に使い食事していた。ワタシたちより少し小さなどんぶりで。


 明くる日。家中の目覚まし時計を駆使し自力(?)で起きて階段を降りようとするとお母さんの声が。

「マァちゃん、また手紙来てる」

 え。

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