第1話 終業式

 頭の良い子と悪い子の見分け方を知っている?

 僕は知ってる。


 終業式、明日から夏休み、僕は「これからキャンプでも行くのかい?」ってくらいの荷物を持って学校を出る。

 僕の脇を涼しい顔で追い越して行くクラスメート達。

「アサ!じゃあな!」

「あぁ……」

 僕は汗びっしょりで手を振る、正確には鞄や絵の具箱をブラブラと振る。


「よっ!」

「ヒロ……お前も…」

 僕よりは幾分軽めだが、ヒロも充分キャンプ組だ。


 成績の良い子と悪い子の見分け方。

 終業式に身軽な子供は成績がいい…荷物が多い子は成績が悪い……。


 龍神池のほとりでヒロとアイスを食べながら休憩することにした。


「なぁアサ、知ってる?龍神池の幽霊」

「知ってるよ、満月の雨の夜、女の幽霊がでて……」

「そう…池に引きずり込む!」

「うん」

「でさ!夏休み中に、もし満月で雨の日があれば、見に来ないか?」

「幽霊を?」

「あぁ、肝試しみたいなもんだよ」

「う~ん…いいけど…家を抜け出せるかな?」

「いいじゃん…コソッとさ…連絡するからさ、なっ」

「わかった」


 ヒロはいつも僕を誘ってロクでもないことをしでかす。

 僕はヒロが大好きだ、くだらないことを思いついては後先考えずに突っ走る。

 僕と違って行動的だ。

 2016年 夏。

 小学校最後の夏休みだ、ヒロとなにかやってみたかった。

 僕らは龍神池からまた、重い荷物を担いで家まで歩くことになる。

 でも、さっきより足取りは軽い。

 面白いことになりそうな予感がする。

 きっとヒロも同じだ、楽しそうにTVやネットで聞きかじった幽霊の話をしている。

 科学的にはどうだ…でも俺は…云々と。


 家に帰ったらパソコンで満月の日を調べよう。

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