こんなにも世界は哀しみと愛しさと祈りで彩られている

 独特でどこかノスタルジックな世界観が、渡が乗っていた鉄道に私も一緒に乗せたのでしょうか。気づけば、一気に読了していました。
 こんなにも色が世界を語る作品を読んだのは、初めてです。大自然や道具だけでなく、渡や朝顔、ムスビの想いまでもが、それぞれが持つ色で鮮やかに浮かび上がってくる。そして、渡の絶望すらしそうな絵に対する思いは、狂気というだけでなく祈りにもどこか似ているようにも思えて……心が震えました。

 描くことは美しく尊いのだという思いがこみ上げた、素敵な作品でした。