44 ストレス発散・福寿草

【ストレス発散】


「五月様、ストレス溜まっておいでですか?」

「んー、まあ、程々に」

「では、これをクシュクシュしてください」

 メイドさん、五月先生に袋を渡します。


「ポテチ?」

「余ったのを砕いて、サラダにかけます」

「ふーん」

 五月先生、袋を受け取ります。


 クシュクシュ、クシュクシュ……。

「こりゃいい。ストレス発散になるかも」


 次の日です。

 パリパリ、パリパリ……。

 ヒロシくん、テレビを見ながら居間でポテチを食べています。

 五月先生もテレビを見にきました。


「ヒロシくん、ポテチ残しといて」

「五月先生、どうぞ」

 ヒロシくん、袋を差し出します。

「いや、今食べたいんじゃないんだ」

「へ?」

「メイド、今日もポテチサラダにしよう」


 クシュ、クシャクシャクシャ……。

 パラパラパラ……。

 ポテチ、無残に粉々です。

「ちょっとやり過ぎた?」

「先生、俺まだ食べてるのに……」




【福寿草】


 お庭の福寿草がきれいに咲きました。

「別名は元日草、春だなぁ……」

「あい、春でございますね」

「陽が差すと開き、陰ると閉じる」

「花言葉は幸せを招く、永久の幸福だそうですよ」

 なんだかんだ、五月家は幸福そうです。


「名前や花言葉はめでたいが、毒があるから食べられん」

「あい」

「そうなんすか?」

「ああ。ヒロシくん、食べたら中毒を起こすからな」

 五月先生、いくらなんでもヒロシは食べません。


「めでたくて、陽気が良くなると咲いて、毒がある。まるで誰かさんみたいですね」

「誰?」「誰?」

 おふたり、言わずもがなです。


「いや、具体的に誰とは……」

「わたくしなのでしょ!?」

「う、うん……」

 わかりきったことです。


「ふたりはいつも仲良いな」

「良くない!」「良くない!」

「ほら、気が合ってる証拠だ」

「いやでございます〜〜」

 メイドさん逃げ出しました。


「ヒロシくん、今晩のおかずには気をつけろ」

「は?」

「福寿草が入っているかもしれん」

「まさか……」

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