41 今年も・雛人形①

【今年も】


 いいお天気です。

 お庭の枝垂れ梅も咲きましたし、もうすぐ春です。

 ヒロシくん、掃除機を担いで五月先生の書斎へ。


「先生、部屋掃除しますよ」

「ん、頼む」

 ずいぶん散らかっています。


「な、なんすか、この大量のティッシュは!?」

「ああ、すまん。手間かけるね」

 ヒロシくん、爪でつまんでゴミ箱に入れていきます。

 そのゴミ箱もティッシュでいっぱいです。


「こないだ出したばっかなのに、もう一箱空じゃないですか。さては先生……」

「ヒロシくん、君の想像はブー。ヘーックション」

 おやおや五月様、鼻水垂れてますよ。


「ヘーックション、ヘーックション」

「先生、大丈夫っすか?」

「ああ。今年も始まっただけだ」

「ん? 何が?」


「ヘーックション、花粉症……」

「はい、ティッシュ」

 ズズ……。




【雛人形①】


「あかりをつけましょ、ふんふふふ〜ん♪」

 メイドさん、ご機嫌です。


「長旅ご苦労様でした」

「お、雛人形か。実家から届いたんだな」

「あい、五月様。早速お飾りです」

 大きなダンボールがいくつも並んでいます。


「へー、本格的な七段飾りだ」

「はい。わたくしが生まれた時に、じじ様が用意してくださったのですよ」

 メイドさんの部屋を占領するひな壇です。


「これじゃ、お前の寝るところがないじゃないか」

「大丈夫です。机を片付ければお布団敷けますから」

「ちっこいからな」

 またそれですか。


「え、メイドどこ?」

「こ、ここにおります!」

「あ……ごめん、五人囃子に紛れてた」

「だから、そんなに小ちゃくないです!」

 ダンボールには隠れられそうですが。


「いい加減このネタも飽きたなー。お花をあげましょ、ふんふふふん……」

「・・・」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る