如月

35 においの日・節分

【においの日】


「五月様、今日は2(に)0(お)1(い)の日なのだそうですよ」

「ほぉー、上手く考えたもんだな」

「ええ」

 ただの語呂合わせですけどね。


「私たち二人とも、においには敏感だしな」

「そうですね」

「苦手な匂いも多いしな」

「ところで前もお聞きしましたが、冬のにおいってどんなでしょう」

 そういえば、そんなことありましたね。


「えーっと、聞かれてたっけ?」

「はい、先月」

「私はなんて答えた?」

「コタツの中の靴下のにおいと……」

 あの時五月先生はご機嫌斜めのようでした。


「んーっと、記憶にない」

「でしょうね……」

 五月先生、相当煮詰まっていたのです。


「今度はちゃんとお答えくださいませ」

「そうか。冬のにおいねぇ……。うむ、氷のにおいだ」

「ほぇ、氷ににおいはございません」

 冷蔵庫の氷は、なんとなくにおいますけどね。


「つまり無臭だ。強いて言うなら、寒さのにおいだな」

「意味わからないでございます……」




【節分】


 二月三日、節分です。

「五月様、豆まきいたしましょ」

「ん。で、どっちが鬼やる?」

 五月家は、豆まきしてから恵方巻きです。


「当然、それは五月様でございます」

「当然ってどういう意味だ、やだ」

「わたくしもいやでございます」

「ふん、文句言わずにやれ」


 ピンポ〜ン……。

 来客です。

「こんな時間に誰でございましょう?」


 カチャ……。

「よう、めいと」

「げっ、ヒロシ!」

 訪ねてきたのはこやつです。


「おお、ちょうど良いところに鬼が来たぞ」

「あい、それでは。鬼は〜外」

 五月先生とメイドさん、ヒロシに豆をぶつけます。


「痛い。なんで……」

 邪気払いです。

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