33 ちょっと出てくる③・④

【ちょっと出てくる③】


「ちょっと出てくる」

「いってらっしゃいませ、五月様」

 メイドさん、今日はやけに素直です。


「あ、あぁ……」

「ただのお散歩なのでございましょ?」

「そ、そうだ。行ってくる」


 パタン……。

 五月先生、無事お出かけです。

「ふむ、五月様怪しいです。あれは絶対、隠れて何かしています」


 カチャ……。

 メイドさん、玄関の扉を開けました。

「今日はあとをつけてみます」


 パタン……ドンッ!

 メイドさん、何かにぶつかりました。

「いでっ、あ、五月様……」

「ふん、やっぱりな」

 五月先生にはばればれです。


「お前の考えることは、だいたいわかる」

「んん〜」

「ついて来るなよ」

「はい。お気をつけて……」




【ちょっと出てくる④】


「お夕飯はお肉とサラダと、おみおつけの具は何にしましょうかねぇ」

 メイドさん、商店街にお買い物にきています。

「らっしゃい」

 八百屋のご主人です。


「人参と大根と、あとブロッコリーくださいな」

「へい、まいど」

「あと、玉ねぎもひと山お願いいたします」

 この八百屋さん、袋詰めではなく未だにざるに盛っています。


「そういや、メイドさんとこ最近犬飼い始めたみたいだね」

「いいえ、うちは飼ってないですよ」

 八百屋さん、勘違いしているようです。


「おかしいな?」

「へ?」

「ときどき五月先生、犬の散歩してるよ」

「見間違いではないですか?」

 五月先生、もしや……。


「そうかい? ジョギングシューズで、ちっこい犬連れて……」

「はっ……そういうことでしたか」

 やっぱり。


「でも、どこのワンちゃんでしょう?」

 五月先生、かのじ……もごもご。

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