26 大掃除・除夜の鐘

【大掃除】


 五月先生とメイドさん、年末恒例の大掃除です。

 それぞれの部屋はご自分で。

 居間はメイドさん担当、お風呂は五月先生の担当。

 お台所は共同作業です。


「ふぃ〜、五月様、今日中には終わりませんね」

「結局、何やかやでバタバタしてたからな」

 たいしてバタバタはしていませんでしたが?


「さっ、五月様、電気の傘お願いいたしますです」

 メイドさん、濡れ雑巾を渡します。

「ん」

 ふきふき、ふきふき……。


「五月様、次は冷蔵庫の上お願いいたします」

 メイドさん、足元に踏み台を置きます。

「ん」

 ふきふき、ふきふき……


「次は……」

「ねぇメイド?」

「あい?」

「この踏み台使えば、お前でも届くんじゃないか?」

 五月先生、一旦降りて言いました。


「いえ、それでも無理なので……んしょ。届かない……」

「……ちっこいな」

「ちっこい言わない!」

「はい、はい」




【除夜の鐘】


 五月先生とメイドさん、おコタでぬくぬくしています。

「五月様、今年もあとちょっとで終わりでございますね」

「うむ、今年は除夜の鐘、百八つ数えようかな」

「あ、それわたくしも」

「お前は絶対、途中で寝る」

「最後まで数えます!」

 おふたり、大晦日の会話もほのぼのです。


「五月様、お歌の番組見ながら年越しそばいたしましょ」

「おっ、待ってました」

 ずるずる、ずるずる……。

「うまうま」

「それはようございました」

 細く長く、お健やかに。


「メイド、熱燗もつけて」

「もう飲むのですか? お屠蘇は朝にいたしましょ」

「お願い」

「しょうがないでございますねぇ。一本だけでございますよ」


 ゴーン……ゴーン……。

 除夜の鐘が鳴り始めました。


 すーぴー、すーぴー……。

 おふたり揃ってうたた寝です。

 ずっ……。

 え、無呼吸?


 皆様、良いお年を。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る