08 夏の名残り・秋の七草

【夏の名残り】


 芸術の秋です。

 メイドさん、短冊に筆で何かを書いています。

「五月様、わたくし俳句を詠んでみました」

「ほぉ、どんなのだ?」


〈残り蚊や メイドの足首 喰うなかれ〉


「ほぉ、いかにもお前らしいな。で、何ヶ所喰われた?」

「三ヶ所でございます」

 なぜか、秋の蚊のほうが痒い気がします。


「はっ! 勝った!」

「へ? なにが?」

「私は五ヶ所喰われた。痒い……」

 別に勝ち負けの問題ではないと思います。

 五月先生も筆を取りました。


〈五月勝つ 五ヶ所喰われし 残り蚊め〉


「詠んでる場合じゃありませんでしょ! お薬、お薬ぃ〜」

「か・ゆ・いぃーーー!」

 十二月くらいまで蚊はいるそうですよ。



【秋の七草】


「メイド、秋の七草知ってるか?」

「知っておりますが……」

 春だけでなく、秋にも七草ってあるんですよ。


「春のと違って、なかなか覚えにくいのでございます」

「はぎ(萩)、ききょう(桔梗)。くず(葛)、おみなえし(女郎花)、ふじばかま(藤袴)。おばな(尾花)、なでしこ(撫子)。これなら言いやすいぞ」

「さすが五月様」


「でもこれ、七草粥にはできないんだよな……」

 秋の七草は、主に観賞用ですから。

「葛餅作れない?」

「作ったことございません」


 きな粉と黒蜜、美味しいですよね。

 葛粉は根っこから作られますが、さすがに素人には無理でしょう。

 メイドさん、市販の粉でで挑戦して差し上げてください。


「七草で何か作れないの?」

「あと三ヶ月お待ちくださいましな」

 先月、おはぎをあんなに食べたのに。


「待ちきれないぃー!」

 五月先生も、食欲の秋のようです。

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