04 お彼岸・くしゃみ

【お彼岸】


 秋のお彼岸です。

「お仏壇に、お供えしましょ」

 メイドさん、朝早くから丹精込めて作りました。


「わーい、ぼたもちだ」

「五月様、秋ですからおはぎでございますよ」

「え? そうなの?」

 こしあんかつぶあん、お米の潰し方、大きさの違いで言い換えるなど、いろいろ説があるようです。

 その中で、季節の花を見立てて春は牡丹餅、秋はお萩と呼ぶ説が最も一般的です。


「今は特に、言い分けはしていないようでございますよ」

「なるほど。私はあんこならどっちでもいい」

「はいはい……」


「胡麻まぶしと、きな粉まぶしもあるのか」

「あい。今年はいっぱい作りました。ご近所にもおすそ分けいたします」

 メイドさん、紙のお弁当箱に一つずつ、丁寧に詰めていきます。


「胡麻ときな粉にはあんこ入ってないの?」

「ご心配なく。もち米の中にちゃんとあんこをお入れしてますよ」

「やった」

「十五夜では砂糖醤油でしたからね。今日はた〜んと召し上げれませ」

 五月先生、あんこ好き過ぎです。


「五月様、おはぎまだ残っておりますよ」

「もう食べられない……けぷー」

 五月先生、膨れたお腹をさすって、満足そうです。




【くしゃみ】


 メイドさん、ゴミ箱のゴミを回収しています。

「最近また、ティッシュの減りが早いのでございます。五月様の無駄遣いを注意いたします」

 特に、居間と書斎のティッシュ箱が空になるのが早いようです。


「五月さ……」

「ヘーックション……ハーックショイ……」

「おや五月様たいへん、お風邪召されたのですか?」

「んー」

 ズズズ……。


 五月先生、ちょうどティッシュを大量に使っているところです。

「あ〜んもう、ティッシュをこんなに散らかして……」

「ハーックショイ……」

「お薬飲まれますか?」

「いや、いい」

 ズズズ……。


 五月先生、一箱使い切る勢いです。

「お医者様行った方がよろしいのでは?」

「いがない……」

 ズズズ……。


「でも、ほら、また鼻水が……ティッシュもなくなりそうでございます」

「秋も花粉症デビュー……」

 鼻水だらー。


「とうとう抵抗力が落ちたのですね」

「とうとうって言うな。ハックチッ!」

 だらー。

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