第29話 お見舞いといえば…

 病院には、能力者がいる。

 この事実を無視できない…と思う…なんだかわからないのだが、嫌な感じがした。

 とぼけ…はぐらかす迦楼人かるとを締め上げたいのだが…また入院しやがった。

 華夜かよの蹴りがいい角度で入ったのであろう。


 迦楼人バカは置いといて、問題は危険極まりない、あの能力の使い方…。

 嫌な気がするのだ。

 リビドーというより、悪意を感じたのだ。

「僕だけじゃ…どうしようもできない…」

 瞬間移動と時間停止。

 目標が明確になって初めて役にたつ能力。

 今、必要なのは探索する能力だ。

 一番近しいのは迦楼人かるとなのだが…どうも信用できない。

 というか…なにかを知っている…隠している…そんな気がする。


 僕は、脱衣カゴの華夜かよの黒いパンティを眺めながら思った…。

(これ1枚で、迦楼人かるとは口を割るだろうか?)

 しばし正座して黒いパンティを左手に乗せて、繁々と眺める。

 デザインはシンプルながら…ピンクのヒラヒラが可愛らしくも淫靡な攻撃性を垣間見せるパンティ。

 クロッチ部分は汚れておらず、シートを張って使用しているものと思われる。

(う~ん…街の平和のために…犠牲になってくれ華夜かよ)

 僕は、用意しておいたジップロックにパンティを保存した。

 持ってくれよ…華夜かよ鮮度ぬくもり


 翌日、

 迦楼人かるとの見舞いへ。

迦楼人かると、具合はどうだ?」

「…………」

 返事が無い…。

 意識はある、幽体離脱はしていない。

 目だけがぼくの方を見ている。

 スケッチブックに

[声が出ない。声帯を痛めたようだ]

 と迦楼人かるとは書いた。

 どうも、華夜かよの蹴りは心肺機能の低下に留まらず、声帯をも破壊したようだ。

 どんだけ蹴りまくったのだろう…。


「聞こえるならそれだけでいい…この病院にいる能力者のことだが…」

 迦楼人かるとの目がギョッと見開く。

「やはり…知っているな?誰だ?話せ!いや書け!」

 そっぽを向く迦楼人かると

 予想通りだ…やはりコレに頼るしかないようだ…。

「コレはお土産だ」

 僕は、ジップロックを差し出す。

 デザインはシンプルながら…ピンクのヒラヒラが可愛らしくも淫靡な攻撃性を垣間見せる、黒いパンティに迦楼人かるとの視線が移る。

華夜かよが昨日履いていたパンティだ」

 迦楼人かるとの顔が明るくパァーッと表情が和らぐ。

「ただではやれない…解っているな…能力者は誰だ?名前を書け…」

 迦楼人かるとがもがく…悩んでいる…葛藤している


 少しだけ、ジップロックを開封して迦楼人かるとの鼻先に近づける。

(あぁ…姉さまのパンティ…いい匂いがする…姉さまの香り…あぁ…姉さまとひとつになりたい…僕を包んで…姉さま…姉さま…僕を離さないで!)


「そこまでだ…どうする?」

 迦楼人かるとは……書いた……男ってやつは、パンティの誘惑に勝てないものなのだ…。


[警備員 岩田いわた 六三郎ろくさぶろう]


 なぜ…この男を迦楼人かるとは庇ったのか…それは聞かないことにした。

 迦楼人バカ少し、目を離した隙に、華夜かよのパンティを被ったまま気絶していたからだ…。

 クロッチの部分が鼻を覆っているあたりが…腹立たしい。

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