第12話 再会レボリューション

 無敵のヒーロー桜木さくらぎ 雪夜ゆきやだ。

 通りすがりの時間操作系ヒーローだ。


 森林公園を散歩中、日陰から日陰へ歩いていると、水源地へ着いた。

 ベンチに腰かけて、水面の輝きや揺らめきを愉しむ。

(絵でも描けたらなら……)

 そんなことを思ってしまうほど穏やかな初秋の午後。


 若い母親が、幼い子供を連れて歩いていく。

 スカートを見ると、つい目で追ってしまうのは、僕の悪い癖だろう。


 立ち上がり、木陰に目を移すと………。

 木登りしている女性が見える。

 スカートで木登りとは……童心に帰り過ぎでは……様子がおかしい。

(違う!首つり?…あっ、ロープを出した、間違いない首つりだ…)


「変身!」

 お面を被り決めポーズ。

「協力をお願いします!」

「あっ!アムパムマソだ~、わー」

 幼い子供がお面にはしゃぐ。

「えっ?私ですか……」

 若い母親が驚いたように答えた

「時間がありません…落ち着いてください…ね」

 僕は母親の返事を待たずにスカートをサッとまくり上げて、身体を滑り込ませる。

「フェードイン」

(生足…ふともも…見上げれば履きこんでいると思われるグレーのショーツ…少し布が薄くなっている感じが…生活感溢れかえるショーツ…ピンクの文字で『LIKE THIS』…どんな感じなの?…奥さん…ねぇ…あなたのソコがどうなってるか想像してねってこと?…)

「ママを苛めるな!」

 子供が僕の尻を蹴飛ばしている。

「いや…変態…」

 若い母親が怯えている。

(大丈夫……あぁぁ…震えているね…大丈夫、近づくよ…もう少しだけ…あぁ奥さん…奥さんの匂いがする~、あぁ…これが奥さんの匂い…視点がボヤけるよ…グレーにピンクが混ざっていく…いく…うん…いいよね…奥さんのソコは、どう?どんな感じ………あぁぁ)


「コンプリート」


 僕の身体はジャンプする、あの女性のスカートの中へ。

「レボリューション!警視庁公認ヒーロー、アングルメーター!」


 角度が良かった…いや悪かった…おそらくジャンプの直前、子供の蹴りに押し出される様な形になったのだろう、思ったより女性のソコに顔が近かった。

 お面がズレて、顔がパンティに密着したまま、肩車のように女性を支えた。

 呼吸するたび、女性の香りが僕の身体中に吸い込まれていく……。

(あぁ…ずっとこうしていたいよ…目の前の若草色のパンティ……草原に倒れ込んだようなような爽快感……)

「自殺なんて辞めるんだ!」

「また…また…でた…またアンタなの?」

 女性が小声で呟く。

「また?またとはなんだ?股から私が出てきて驚いているのか?ソコは気にするな…そういうものだ」

「アンタ!なんなのよ…この間の変態お面でしょ」

「変態お面?…私はアングルメーターだ」

「変態お面、なんでアタシのトコばっかくるのよ~」

「アングルメーターだ!アナタが自殺をしようとしているから私がこうして…股からレボリューションすることになるのだ」

「もう…死なせてよ…変態お面」

「そういうわけにはいかないな…事情は知らんが…死んだら…その…なんかダメだぞ!アングルメーターだ」

 僕は、彼女のスカートの中でパンティに顔を押し付けたまま、彼女を支え続けた。

 彼女の身体の力が緩んだ。

 僕は、彼女を地面に降ろしてズレた仮面を直す。


「なんで…アタシばっかり…どうして…」

 顔を覆って泣き出す彼女。

「理由は知らん…が…アナタが死んだら…同じように悲しむ人がいるんじゃないか?」

 思い出した…この人は飛び降り自殺しようとしていた人だ。

「アナタを助けるのは2度目だ」

「……そうね……変態お面」

「アングルメーターだ…3度目は無いと約束してほしい…」

「……変態お面……」

「じゃあな…これが最後だと約束したよ…アングルメーターだ」


僕は、ヒョコヒョコとその場を立ち去った。

子供の蹴りが股間に1回クリティカルヒットしていたせいだ…。

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