世界観

世界の歴史

■初めに

 エスペランサーTRPGの世界は「エル=ユーナ」と呼ばれる世界樹の上に存在する世界です。

 ここではエル=ユーナの誕生から、これまでの世界の歴史について語っています。




■世界エル=ユーナの誕生

 初めに何もなかった宇宙空間の片隅に至高神と呼ばれる神がひとつの種を植えました。

 するとその種より、芽が芽吹き、花を咲かせ、一人の少女が生まれました。

 彼女の名こそエルドラシル。

 種より生まれた神であり、世界そのものでもある少女。

 少女の成長と共に樹は立派な大樹となり、宇宙になってなお巨大な大きさを生み出しました。

 やがて大樹の上に世界と呼べる地平を構成し、現在の『エル=ユーナ』と呼ばれる世界が誕生しました。

 エルドラシルは自身より生まれた世界が完成すると同時に、その身を大樹の中核である『揺り篭』と呼ばれる場所へと閉じこもり、そこより世界を支える支柱そのものとなりました。



■神王の降臨

 エルドラシルより生まれた世界からは様々な生物が誕生しました。

 草木はもちろん、動物や人間、あるいは様々な種族など、全てはエルドラシルの加護により世界に誕生していきました。

 やがて、人類が未熟ながらも文明を作り始めていたその矢先、星空の向こう側よりこの世界に降り立つ存在がいました。

 それはかつて、この場所にエルドラシルの種を植えた至高神と同じ神より遣わされた神。

 世界を統治するためにこの地へと舞い降りた統治神の到来でした。


 その神、自ら『神王クレイムディア』と名乗り、彼によって当時未熟であった人々の文明はそれまでとは比べるまでもないほどの進化を見せ、神によって統治されることにより人々の繁栄と安寧はより約束されたものへとなりました。



■三王の誕生

 神王クレイムディアが世界に降り立ち、世界の統治をなそうとしたその矢先、突如として謎の獣が世界に現れる。

 それらは黙示録に存在する獣のように世界そのものを破壊するほどの強大な力を持ち、人々を統治せんとした神王を喰らうべく矛先を向けてきた。

 それに対して神王は世界に降り立った後に、自らの血肉を分けるに相応しい三人の人間を選別し、その者たちに己が血肉を分け与える。

 これによりその三人は神の領域へと引き上げられ、この時に誕生した三柱の神はそれぞれ

 『地王エルドラード』

 『空王エデン』

 『海王ノア』

 と呼ばれ、彼ら三名は『三柱神』と呼ばれることとなる。

 この後、三柱神率いる神王と黙示録の獣たちによる最初の神話大戦が勃発する。

 長く続くかと思われた戦いは早期に三柱神率いる神王が勝利することとなり、やがてすべての黙示録の獣が滅びると同時に、世界に再び安らぎが戻ることとなる。

 その後、神王の統治によって世界は楽園とも呼べる時代を過ごす事となる。



■魔王の誕生

 神王統治のもと、安寧の日々を送っていた人々であったが、あるとき、神王クレイムディアが取った行動により世界は大きな変動を起こすこととなる。

 神王クレイムディアは自らが統治する世界の安定を磐石にするべく、人間の女性との間に子供を産ませる。

 それは神の血肉を受け継いだ文字通りの生まれながらの神であり、その子に自らの統治を委ねるはずであったが、生まれた子は神王の予想を遥かに上回るほど強大な存在であった。

 この子こそが後にこの世界にて永遠に語り継がれる事となる災厄の神祖『魔王アルトサウディウス』であった。

 生まれながらに美しき外見、父である神王を越えた超絶的な能力を有し、更には生まれながらに欲望以外の感情を持たなかった 。

 アルトサウディウスは父である神王クレイムディアを殺害し、自ら魔の王を自称し

エル=ユーナを己がの欲望、殺戮本能が赴くままに蹂躙と破壊を行なう。


この時、世界に残った三柱神の内、戦闘に特化した地王・エルドラードと空王・エデンが 魔王アルトサウディウスへと戦いを挑んだ。

 それはかつての獣討伐の際の大戦を上回るほどの死闘であり、文字通り神話の領域の戦いであった。

 やがて長い戦いの末、地王エルドラードが自らの命を犠牲に魔王アルトサウディウスの身を破壊する事に成功する。


 しかし、自らの体が破壊されたその瞬間、神祖の魔王の肉体は無数の欠片となりエル=ユーナの世界へと降り注いだ。

 この時、世界に降り注いだ神祖の魔王の血と肉、骨の欠片、死してなお欲望の感情がその欠片全てに宿り、“呪い”となり、世界全土に影響を与えることとなる。



■魔王が残した厄災『魔族バスタード』と『魔王の呪いサクセサーオブサタン

 神祖の魔王が世界へと降り注いだ血肉や瘴気によって世界は大きく一変した。

 魔王の血肉を生きたまま浴びた生命は、それまでその世界に存在したあらゆる種族とも異なる全く別の種族として生まれ変わる事となる。

 動物は魔物と呼ばれる邪悪な存在にし、そして人間などの知性を持った種族は『魔族バスタード』と呼ばれる世界の敵へと変貌した。

 彼ら、魔族と魔物は神祖の魔王が持つ歪んだ魂の理をそのまま引き継いでおり、神祖の魔王と同じく世界を破壊するべく行動を開始する。


 また世界に落ちた災いはそれだけではなかった。

 神祖の魔王が世界へと落とした災いの中でも最も大きな災厄と呼ばれるものが、かの魔王が生まれながらにして有していた十の異能、十の能力。

 それらが呪いという形となり、世界中に散らばった事。

 この魔王の能力が宿った呪いを人々は【魔王の呪いサクセサー・オブ・サタン】と呼んだ。


 この魔王の呪いこそ、神祖の魔王が遺した最大の呪いにして、かの魔王が有した力の源にして、理の欠片である。

 この魔王の呪いに侵された者は一人の例外もなく、その身と魂は神祖の魔王と“魔王”と呼ばれる人格、存在へと変貌を遂げる。

 同時に、神祖の魔王が有していた人知を超えた能力を受け継ぐ事となる。

 通常、魔王の呪いを常人が受ければ、その瞬間に存在が消滅するほど強力なものだが、中にはそうした呪いを受け入れ、存在が変貌する者達も少なくはなかった。

 いずれにしろ、魔王の遺した呪いにより、世界中には魔物と魔族と呼ばれる新たなる邪悪の眷属が生まれることとなり、安寧を日々を過ごしていた人々はかつてない未曾有の危機へと飲まれることとなる。



■三英雄の誕生

 一方で本来ならば人々を守るべく動くはずの空王エデンであったが、魔王との死闘により全身の力を使い果たし、死にたい同然の体であった空王はその身を癒すため、やむなく地上より離れ、自らの居城でもある空中都市エデンへ渡り、しばしの休息を取ることとなる。

 また一方で魔王との戦いに唯一参加をしなかった海王ノアは、自らが崇める神王クレムディアが死んだことにより、世界に対する価値を見いだせなくなっていた。

 そのため、新たに生まれた魔族と魔物に蹂躙される大地を見てなお、それに対してなんの感慨も浮かぶことなく、ただ荒れ果てた世界を見捨てるが如く、海王ノアもまた自らの居城である海底都市ノアへと身を潜め、表舞台より静かに消え去っていく。


 そうして、魔王と三柱神との戦いの後、世界は更に荒れ果てる事となる。

 神々に見捨てられた世界の中、『魔族バスタード』による支配と蹂躙が続き、人々は怯え、苦しみ、恐怖を抱きながら過ごす事となる。


 しかし、絶望のみが世界を支配したわけではなかった。

 どんなに小さくとも暗い闇の中に光が灯るように、絶望する人々の中から、彼らを救済するべく、人の中より新たな希望が生まれたのである。

 それまで神に頼るだけの人の中から、自ら立ち上がり、剣を握る者達が生まれ始めた。

 やがて彼らの中に人々を導き、守り、そして魔物と魔族を退けた英雄が誕生することとなる。

 その者達こそ原初の英雄にして、始まりの勇者達。

 世界が生み出した最初の希望と呼ばれる者達。

 『三英雄』と呼ばれる救世主達の誕生であった。



■初代剣聖

 三英雄の活躍により、神々の消失以降、長く魔物や魔族たちによって苦しめられていた人々に救済の日が訪れる。

 中でも三英雄のリーダーにして、人々を救うために世界がその力を代行として授けたとされる初代剣聖アークによる活躍は今なお伝説として伝わっていた。

 しかし、そんな三英雄たちによる活躍も終わりを告げられる。

 神祖の魔王が遺した災厄の塊である【魔王の呪いサクセサー・オブ・サタン】。

 それを宿した人間との戦いを三英雄たちも繰り広げていたが、そうした【魔王の呪いサクセサー・オブ・サタン】をその身に宿しながら、自我を奪われることなく自らの力へと還元する者達が現れた。

 彼らこそ神祖以降、この世に生まれた魔を統べる王。

 すなわち――魔王の誕生であった。



■五大魔王の誕生

 神祖の魔王の力を受け継ぎ、この世に生まれた魔王はひとりではなかった。

 三英雄が生まれたとされる時代、まるで彼らに対抗するかのように魔の側にも、そうした強大な力を持つ魔王が五人生まれることとなる。

 彼らこそ「五大魔王」と呼ばれる存在であり、今なお五つの大陸それぞれを支配する魔族達の王である。

 中でも“不敗の覇王”と称される魔王フォルクスは当時、剣聖と呼ばれたアークをわずかな傷を追う程度で殺害し、三英雄と呼ばれた人類の救世主たちをその手で破壊した魔王とされている。

 三英雄が魔王の手により滅ぼされると同時に、世界は再び五大魔王のもと、蹂躙されるのみと思われたが、意外なことに三英雄の死後、魔王率いる魔族の軍勢が大陸を襲うことはなかった。

 その後、魔王と魔族たちによる沈黙は実に二百年間続いたとされる。

 人々はこのつかの間の安寧期間を『二百年の沈黙』と呼んだ。

 一説には三英雄たちとの戦いにより 魔王たちも傷つき、二百年の沈黙を余儀なくされたとも、魔王たちによる束の間の戯れとも、あるいは魔王同士による謎の契約が交わされたとも多くの説が残っている。

 いずれにしても、この後、二百年に渡る空白の期間の間に人々は文明を立て直し、いつまた魔王や魔族が現れても対抗できるよう勢力を整え、人の手による開拓が世界中で行われ、その功績は現在に至るまであらゆる発展の手助けとなった。



■200年の開拓

 『二百年の沈黙』の間に、人類と世界において起きた発展と変化は数しれなかった。

 まずひとつは探求者と呼ばれる職業の確立と、そんな彼らを支援する探求者ギルドの設立である。

 これを成し遂げた人物こそ、後に“悠久鳥”と呼ばれる探求者の王アリアスである。

 彼によって世界初とも呼べる世界地図が完成され、この世界には五つの大きな大陸があることが判明する。

 その後、彼の功績によって五つの大陸それぞれが交易や貿易を行い、お互いの文明の発展を手助けしたとされる。

 そのほかにも三柱神が扱ったとされる三つの神秘。

 『天術』

 『海鳴』

 『地脈』

 これら三つの技術が人々の間に伝わり、魔族と戦うための明確な力を得たとされている。

 中でも天術に関しては、当時世界中を旅していた“紫の賢者”と呼ばれる人物により伝えられたとされ、この時代において彼の存在がなければ人々の進化は間違いなく百年近くは遅れていただろうとされている。

 その他においても各大陸において様々な文明の開拓、英雄の活躍により世界中の人々は神の加護がなくとも自らの力で進化できることを証明し続けた。

 そうして、二百年の時が過ぎた頃、再び魔王による侵略が始まったのである。



■銀の太陽

 まず初めに動いたのは南の大陸ムーヴェリアスを支配する“眠りの皇帝”ヒュプノプスであった。

 彼は自らの目的のために全人類へ向けて宣戦布告を果たすが、それに対して彼を倒すべく立ち上がった英雄たちがいた。

 彼らこそ『銀の太陽』と呼ばれる英雄たち。

 彼らそれぞれは出身も出自もバラバラの人間であったが、あるひとつの共通点が存在した。

 それこそが、かつて神祖の魔王を討ち滅ぼした地王エルドラードが扱っていたとされる神の武器『神器』を扱える選ばれた人間という点であった。


 かつて地王エルドラードが扱った神器の名は神剣ヴァン・ゼリア。

 しかし、この神剣は魔王との戦いの際に六つに分断され、それぞれが欠片となりながらもひとつの強大な神器として再び形を成したのである。

 この砕かれた神器を代々受け継いできたエルドラードの血肉を受け継いだウォーレム族の巫女アラウ=スー。

 彼女の手により六人の英雄が、それぞれ六つの神器に選ばれ、銀の太陽と呼ばれる英雄チームが誕生したのである。

 そうして、銀の太陽によって眠りの皇帝は滅ぼされることとなり、ここに人類初の魔王討伐という偉業を達成したのである。

 しかし、その喜びも束の間、眠りの皇帝を倒し、油断しきった銀の太陽を襲ったのは北の大陸フォブリアを支配する“死の王”タナトスであった。


 タナトスによる突然の襲撃により、銀の太陽のリーダー的存在であった“紅蓮王”ロイが倒れ、続けて“銀の乙女”ノエルまでその手にかかった。

 しかし死の寸前、ノエルの一撃により死の王もまた多大な傷を負うこととなり、以降500年に渡る休眠を余儀なくされた。

 ここに銀の太陽はふたりの魔王を倒すと同時に、その半数を失う痛ましい結果となり、生き残った残りの英雄たちもまたその後、自らの権力闘争のため、かつての仲間と戦い殺し合うという悲劇的な結末を残したとされる。



■七賢伝説

 死の王タナトスの休眠から500年。

 再び姿を現した死の王タナトスによって世界は戦乱の渦へと巻き込まれる。

 しかし、そんなタナトスを打倒するべく、再び人類の中より英雄たちが生まれる。

 彼らこそ、かつての銀の太陽と同様、人々の希望を背負った英雄たちであり、後にその名を“七賢”と呼んだ。

 七賢の活躍により、死の王タナトスは今度こそ北の大陸フォブリアの最北端、死の王の居城にてその命を落としたとされている。

 その後、七賢達による活躍は魔王討伐のみならず、国の発展と、新たなる時代の促進にも活躍を見せた。

 中でも七賢のリーダー格たる英雄バサルトの親友にして、その参謀を務めた人物グレスト=F=レヴァントスこそ、後にこの世界に大きな影響を与える巨大都市国家。

 エデン帝国を作り上げた稀代の天才英雄であった。



■エデン帝国の設立

 七賢のひとり、グレストによって発見されたかつての空王エデンの居城とされた浮遊都市エデン。

 その地に新たな帝国を作り上げ、同時の軍事力を築き上げ、やがてそれは世界中へと影響力を及ぼすほどとなった。

 以降、このエデン帝国は人々における希望の象徴の一つであり、人が魔族に対抗するための第一戦線を担うこととなる。

 また、このエデンよりの出身より数多くの英雄、あるいは偉人、あるいは傑出者が生まれることとなり、その後、このエデンが世界中の国に与えた影響は多大であると言える。


■現在

 そして、現在。

 タナトスの滅びと、七賢の結成、そしてエデン帝国の誕生から約500年。

 世界は新たなる発展と同時にいつ終わるとも知れぬ魔族からの侵攻、そして新たなる魔王の到来と侵略に怯えていた。


 かつて初代眠りの皇帝と、初代死の王と葬ったとは言え、彼らが宿していた魔王の呪いは未だ世界に取り付いていた。

 そうして時代をめぐる事に、魔王の呪いを継承するにふさわしい人物へとそれは行き渡り、人間だけでなく、魔王の側においても様々な世代交代も行われていた。


 新たなる魔王の到来。

 魔族の侵攻。

 終わることのない戦い。

 そして、未だ人類の多くが知らぬ、魔王とは別の世界を蝕む影の存在。

 世界を白く染め上げようとする代行者の存在を知らずにいた。


 だが、どんなに時代が巡ろうと、再び絶望が生まれようとも、人々はそれに対抗する手段を知り、持っている。


 いつの時代においても登場した人々を守るための英雄、希望の姿。

 彼らこそ、この世界の希望。

 すなわち――エスペランサー。


 この世界の新たなる希望となる人物。

 それこそが君たちなのだ。

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