勉強会

「勉強会をしよう」

随分と唐突だった。

「どうして急にそんなことを」

「どうしてって、夏休みがかかってるからに決まってるじゃないか」

そういうといきなり肩を組まれる。

「俺ら、親友だろ?お前がいてくれば俺も赤点だけは回避できそうだし」

「目標が低いな、相変わらず」

「んで、どうするんだ。やるのかやらないのか」

そういわれてため息をつく。

「どうせやらないって言っても来るんだろ」

そういうとダイキはニッと笑って言った。

「よくわかってるじゃないか。それじゃいつも通りお前の部屋な」

そうしてダイキは笑顔で自分の席に戻っていく。

そういえば中学の時もあいつはこうして無理やり勉強会を開いてたな。

あいつ一人だけだったから別に苦労はしなかったが。

そう思いながら先ほどの授業のノートを片付ける。

ふと、誰かが自分を見てるいるような視線を感じ周りを見る。

しかし特に誰かが見ているわけではなかった。

結局その一度っきりだったので特に気にせず次の授業の準備をする。

次の休み時間、またダイキがこっちに来る。

「今度の勉強会、人増やしてもいいよな」

「お前にしては珍しいな。いつもお前ひとりだったのに」

「多少人数いてもやることは変わらないんだしいいよな」

少し疑問に思ったが別に先生をするわけじゃないのでいいといっておいた。


「勉強会?私も行きたい」

目の前の友達、ダイキにそういう。

「お前も成績いい方だろうが…なんで来るんだよ」

そういわれて私は少しだけ視線を逸らす。

「そ、それは…」

「はっは~ん。そういうことか」

ダイキがいかにも殴りたくなるような笑顔でこっちを見てくる。

そうして今度は翔太のほうを見て再びこちらを見てくる。

「まぁ、俺は構わないけど翔太次第だな。次の休み時間にでも聞いてやるよ」

そういってダイキは自分の席に戻っていく。

私はもう一度翔太のほうを見る。

私が気になり始めたのは最近だ。

それもすごく些細なことだったな。なんて思い出にふけっていると翔太がこちらを振り向きそうだった。

目線を合わせるのが恥ずかしいので慌てて逸らす。

放課後、教室を出る前にダイキに止められた。

「聞いてきたぞ、別に構わないとさ。ただ、お前一人だと俺がつらいから誰かもう一人誘っといてくれ」

「あと一人って、そう簡単に捕まえられるわけが…」

そこまで言ってから思い出す。

そういえばダイキに思いを寄せてる子が一人いたことを。

「日にちは次の土曜だ、それまでにあと一人よろしくなー」

そういうとダイキは教室を後にした。

私は携帯を出してある子に連絡を取った。

「次の土曜日か~」

そう呟き私も教室を後にした。


約束の土曜日になり俺は部屋を掃除していた。

もともとそこまで汚れているわけではないが人を迎えるのだ。普段よりも綺麗にしておきたい。

そう思って掃除を始めて1時間。掃除機がかけ終わると同時に家のチャイムが鳴る。

「翔太―、お友達が来たわよー」

「上がってきてって伝えてくれ」

母さんにそういうと「お邪魔しまーす」という声のあとに階段を上ってくる音が聞こえる。

「よっ、翔太。今日もよろしくお願いするぜ」

「「…おじゃましまーす」」

いつものテンションで入ってくるダイキに対して恐る恐る入ってきた女子二人。

一人は同じクラスの華。

あまりしゃべってたことはないがダイキと一緒にいるところを時折見かける。

もう一人は…クラスが違うので面識がない。

それを察してか華の方から紹介してくれた。

「この子は私の友達の莉夏、たまーに勉強を見てくれてるし学年トップだしいいかな~って」

「いいもなにも大助かりだ。この馬鹿にもちょうどいいだろ」

そういって俺は適当に座ってと言って部屋を一度出る。

そのまま台所に向かいお茶と人数分のコップを持って部屋に戻る。

「お茶でよかったか?」

「俺は別に買ってきてるし先こっち飲むわ」

「私は大丈夫」

「…私も大丈夫です」

「それじゃ、とりあえず勉強するか」

そうして4人はそれぞれの勉強に集中した。

区切りが良くなったので一息つくために身体を伸ばす。

それが合図になったのかほかの3人も集中することをやめ身体を伸ばす。

「何で英語できなきゃならんのだ、俺は日本から出ねーぞ!」

「最近では海外から人も来るんだから最低限できるようになりなさい」

「もう日本語を世界共通語にすればいいんだよ!!」

「お前それ勉強しに来るたびに言うのな」

「…英語、できたら楽しいと思うよ?」

「俺が楽しいと思うのはきっと運動だけだよ」

そういうとダイキは机に突っ伏した。


家に帰り私は登録されたアドレス帳を見ていた。

あれから夕方まで休憩をはさみながら勉強をしていた。

時よりダイキが英語を見て発狂してたりもしたがみんなしっかり集中していた感じだった。

そして帰るとなったときにダイキが言い出した。

『せっかく今日勉強した仲間なんだし連絡先交換しようぜ』と。

そうして私たち4人は連絡先を交換したわけだが…

私は悩んでいた。

今日のお礼を言うべきかどうかを。

一応帰る前にお礼を言ったので別に言う必要はないのだが。

好きな人の連絡先をもらったのだ。少しでもお話ししたいと思うのはふつうだろう。

でも迷惑じゃないかなどと思ってしまってメールできずにいた。

なんてもやもやしているとお母さんが部屋にやってきた。

「華~、お風呂に入らないの~」

「ん、今から入る」

お母さんに言われて私は携帯をベッドにおいてお風呂に向かう。

お風呂から上がり部屋に戻ると携帯が光っていた。

見てみると翔太からのメールだった。

『今日はお疲れ、おかげでバカの相手しなくて済んだから勉強がはかどった。もしよかったらまた勉強会しよう』

「――っ!!」

私はうれしくなりそのままベッドに飛び込む。

「また今度か~」

そう考えただけで私はにやけてしまった。

それから何度もメールを見返してにやけている華がいた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る