コール オブ

蒼月狼

受信料徴収員 ★

「くそ!、、、、またか~」


 武(タケル)は瞬間的に苛立ったものの、間を置かずに溜息をついた。原因はテレビのHDに録画した番組が映っていなかったせいだ。

 別にテレビが壊れているわけでは無い、買ってまだ5年も経っていない。問題は電波の方だった。

 ここ数年、決まって晩秋から春先にかけて、幾つかの局が受信不良を起こす。

 このため秋の番組、新春番組はほぼ全滅状態だった。


 アニメだけ見ていれば幸せな武にとって、これまでアニメ放送枠が殆ど無い地元のテレビ番組などに興味が無かった。 

 その昔は「新世紀ヱヴァンゲリオン」を放送受信できる立地の友達から、ビデオ録画したモノを貸してもらって観ていたモノだ。

 それ以外は、映画にしろアニメにしろソフトレンタルしていた。最近、ようやく動画配信サイトに加入して、視聴するコトを覚えたばかりだ。


 状況が変わったのは年齢的にニュース番組にもそれなりに興味を持つようになったコト。

 新聞や、ネットは、意識して閲覧しなければならないが、TVは「ナガラ」でもそれなりに情報が拾えるのは利点だと思う。

 そして、運営やそのあり方に批判はあるモノの、国営放送局が製作する最近のスペシャル番組や、大河ドラマ、アニメ番組に興味を引かれ。また民放各局が、小説や漫画原作の番組を数多く制作放映するようになって、テレビに再注目する様になった。


 だから楽しみに録画している番組が録画失敗となると、どうしても続きが気に成る、見たい欲求が抑えられない。レンタルリリースまで待つなど不可能だ。いわゆる海賊放送に手を出してしまう。

 良心がとがめるが、だからと言ってオンデマンドのためだけに配信の視聴契約を次々と交わすのは、不経済だと感じる(個人の言い訳に過ぎないが)。

 原因は、受信電波だと解っているので、付き合いの長い電気屋に、何度も頼んで調整してもらった。しかし、一向に改善する気配が無い。

 もはや、住宅立地の関係(地域の不動産開発や、誰かが異常に強い電波を出している)なのかもしれないが。たかがTVごときで、引越しまで考えらられない。

 受信料を納めているのだから、放送局に文句を言う事も考えたが、民放番組も絡んでいるので、そこだけが原因とは言いがたい。

 近所では、問題ないトコも在るらしいので。やはり自宅の設備を疑うしかないのだが、ソレまでは受信に問題無かったのが、武としは、気に入らなかった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る