第四話 〜al iksir〜

「エクス君」

「はい」

「これは一体どういうことかしら?」

「どうと言われましても……」

 薬瓶を抱え二階から降りてきたクレアに、僕はごもっともな質問を受けている。

 と言うよりこれは尋問だ。

 僕の背中に隠れるようにレイナがしがみつき、不安そうに僕の袖を掴むタオ、足元では倉庫から持ち出した機械を分解しはじめているシェイン、そして後ろのソファーで寝かされているファム。

 怪しい以外の何者でもないよね。

 僕は事の顛末とはぐれていた仲間だったということをかいつまんで説明し、改めて迷惑掛けたことを謝罪した。

 なんとも納得しかねるという態度のクレアを宥め、預かっていた鍵を返し、代わりに薬瓶を四本受け取る。

 苦戦しながらも何とかみんなに薬を飲ませ、後は効果が表れるまで待つだけとなった。

 ようやく一息ついた僕は、気になっていたことをクレアに尋ねてみた。


「さっきお父さんは科学者って言ってたけど、医者とは違うんだ」

「そうね、どちらかと言うとハカセかな」

「なるほど。他にご家族は?」

「ワタシとお父さんだけよ。お母さんはワタシが小さい時に病気で死んじゃったわ」

「ごめん、変なこと聞いて……」

「気にしないでよ、だってそれが運命だったんだから。ワタシもお母さんと同じ病気なの。お父さんがその治療薬の研究をして作ったのがこのクスリよ。イデンセイの病気だから完全には治せないみたいだけどね」

 なんだかマズイことを聞いてしまった気がする。

 こんな若いのに重い病を患っているなんて、赤の他人である僕が首を突っ込んでいいことじゃない。

 クレアはあまり気にしてる様子はないけど、これ以上この話題を続けるのも憚られたので、僕は話題を変えるためにある疑問について聞いてみることにした。

「ここってどこなの?」

「ん? ワタシの家だけど?」

「そうじゃなくてさ、国とか地域とか。ほら僕らは旅の途中で迷っちゃたくらいで、ここがどこなのか分からないんだ」

 キョトンとしていたクレアも、僕の言ってる意味が分かったみたいでおかしそうに答えてくれた。


 でもその言葉は、僕が想定していたものとはまったく違う、普段僕達の会話の中でしか出てこない単語が含まれている、とても不釣り合いな内容だった。

「ここはソウクじゃないわよ? 多分だけどね。ここに来たならわかってると思うけど」

「!? それってどういう意味?」

「うーん。ワタシもお父さんから聞いただけだから詳しいことは知らないけど、元々はガルディアという国のシュトにいたの。お父さんは大学で働くキョウジュで、お母さんは図書館で働くシショだったんだって。さっき言ったみたいにワタシが小さい頃に病気が原因でお母さんが死んじゃって、ワタシも同じ病気を持ってることがわかったから、お父さんが研究してクスリを作ろうとしたの。ワタシはお母さんが死んじゃってしばらくしてから病気がハッショウしてずっとベッドで寝てたからよく知らないんだけど、町が黒い嵐に襲われて、気がついたら屋敷だけがここに残ってたんだって」

 それってつまり……

 ここは崩壊した想区の残骸ということか?

 僕が黙って考えていると、そんなに意外だったかしらと言う顔で、おかしそうに続けた。

「もう! いくら病気だからって今はクスリがあるんだし、屋敷の中を歩いたり散歩だってできるんだから、外がずっと真っ暗で黒い霧におおわれたままなんておかしいってことくらいワタシでも分かるわよ」

 そんな中でクレアたちは屋敷で生活をし、博士は何かの研究を続けているということなのだろう。

 やっぱりカオステラーの影響で……


 あまり和やかと言えない世間話をしていると、薬を飲ませたみんながようやく元に戻ったみたいだった。

「う〜〜、頭痛い……」

「あれ? ここどこ?」

「シェイン、知らないうちにお宝ゲットしてるんですが?」

「おう、坊主じゃねぇか、無事だったか!」

 思い思いの言葉でみんなの無事を確かめ合い喜びを噛み締めていると、それを眺めていたクレアが口を開く。

「お仲間さんたちも無事元気になったことだし、これでお別れだね、エクス君」

「色々とありがとう、クレア」

「そこの扉を開けてまっすぐ進めば玄関だから。あと念のためしばらく仕掛けは切っておくわ。それじゃね、バイバイ」

 状況がまったく飲み込めていないレイナが、僕に事情を説明しろとせっついて来る。

 詳しいことは歩きながらと釘を刺し、どことなく不機嫌そうなクレアにお礼を言い、皆を促して大広間を後にした。


 廊下に出て大広間の扉を閉めると、みんな堰を切ったように質問を浴びせてくる。

「新入りさん、あのカワイイ子は誰なんですか? いつの間にメイクラブしてたんですか、白状して下さい」

「ちょっとエクス、一体どういうことなのか説明してよ!」

 二人は一体何を気にしてるんだ。それどころじゃなかったでしょうが!

「なぁ坊主、俺らあそこで何してたんだ? 全然覚えてねぇんだけどさ」

「とにかく順を追って説明するから、みんな待ってよ」

 ファムは頭に出来たコブをさすっているだけでおとなしくしている。

 廊下の途中で足を止め、僕は沈黙の霧の中で突然黒い嵐に吹き飛ばされてこの屋敷に辿り着いたとこから、何があったのか可能な限り説明した。

 そう可能な限り。みんなの醜態は説明する訳にはいかないので全て割愛したのは言うまでもない。

 上手く説明できずにしどろもどろになりながら、みんなの追求にはそれ以上僕も分かりませんと白を切り通した。


 みんなの話と総合すると、僕より幾分か早く屋敷の前に辿り着いたみんなは、あの化物に出会うこともなく、とりあえずということで屋敷に上がり込み、住人へ道を訪ねようとして廊下を歩いていたことまでしか覚えていないらしかった。

 クレアの話では僕が廊下で大騒ぎしてたのも、レイナたちがおかしくなって屋敷内の部屋に閉じ込めてからすぐのことらしいが、どれくらいの時間差で僕が廊下に入ったとしても、そこで鉢合わせになってもおかしくないくらいの差しかないはずだ。

 そうなると僕が廊下でおかしくされたのは時間感覚ではなく時間そのものだったのか?

 その辺の解釈は不毛ということで早々に打ち切り、一番重要な話、ここがどこかの想区ではないらしいということを伝えた。 

 それについて僕の考えは敢えて口にせず、レイナに質問をしてみた。

「レイナ、ここって一体何なのかな?」

「ごめんなさい、私もこんなのは初めて見たから何も分からないの」

「そっか……」

「何か気になるの?」

「まさか名残惜しいとか言うんじゃねぇだろうな?」

「違うよ、そういうんじゃなくてさ」

 経緯を話し終え再び廊下を歩きながら、僕はぼんやりクレアと博士のことを考えていた。


 程なくして玄関ホールのドアに辿り着いた僕達は、その扉を開け次々と玄関ホールに出ていった。

 僕は最後にもう一度だけ振り返り、あのとてつもない時間彷徨った廊下を眺める。

 こうしてみると大した距離じゃない。

 思い返してみても何とも不思議な体験だった。

 感慨に耽っていると、ホールから戻ってきたファムに後ろから声をかけられた。

「エクスくん。ちょっと確認したいんだけどさ、この薬博士が研究して作ったって言ってたよね?」

 そう僕に訊ねたファムの左手には、空になったあの薬瓶が握られている。

「うん、彼女がそう言ってたよ」

「名前は聞いた?」

「クレアだよ」

「少年……文通でもはじめようってのかい? そうじゃなくて博士の名前」

「ご、ごめん。直接会ってないし話の中で名前は出てこなかったよ」

「ふむ……」

「ファムは何か知ってるの?」

「いやいや、ちょっと気になってね〜。万病に効く万能薬、か……多分ELIXIRね……」

 ファムは何か含みのある言い方をして、それ以上何も教えてくれなかった。


 通りすがりの魔女ことファム、またの名をなんちゃって魔女。

 あちこち旅していたって話は聞いてるけど、どの想区の出身かも何も分からない。

 謎が多いと言うか謎だらけの人だ。

 お陰でバスルームから連れ出すのもひと苦労だった。

 まずい。余計なことを思い出してしまった。

「なになに、エクスくんは私が気を失ってる間に何かやましい事でもしようとしてたのかな?」

「何もなかっ……何もしてないよ!」

「ニシシシシ、そういうお年頃だもんね〜。まぁそういうことにしといてあげましょう♪」

 ……ファムのことが苦手になりそうだ。

 そんなくだらないやり取りをしてると、先に玄関ホールに行っていたレイナの大声が聞こえてきた。

「二人共ちょっと来て! 大変なの!!」

 僕とファムはすかさず臨戦態勢を取り、玄関ホールへと駆け込んだ。


 そこには目を疑うような光景が待っていた。

 黒い霧──あの屋敷の外を覆っている闇が、扉の合わせ目から漏れ出している。

 それどころか下の隙間からは、最早黒い水としか表現できないような物が染み出してきていた。

 まさかあれが屋敷の中に来るのか?

「みんな扉から離れて!」

 僕が空白の書に導きの栞を挟み込むのを見て、みんなは瞬時に状況を把握したのか一斉に僕の後に続く。

「爆発系魔法か衝撃波! なければ手数で押し切る!」

「了解!」

 高価そうな絨毯に染み出してきた黒い水が波打ち、次第に大きなうねりに変わる。

 その真っ黒なうねりから現れた巨大な闇の怪物達、あれはメガ・ファントム? 僕達はいきなり最大戦力をぶつけた。


 勝負は一瞬で片が付いた。と言うより最早勝負にすらならなかったと言った方がいいかもしれない。

 圧倒的な火力と戦闘慣れした人間がこれだけ揃った状態で一斉に攻撃すれば、ちょっとしたカオステラーでもひとたまりもないだろう。

 僕はそのことよりも、あの闇が屋敷の中にまで這入り込んだ事の方が気がかりだった。

 どうせ倒してもすぐに復活する。とにかくここから離れないと。

 手近にあったカーテンを窓枠から引き剥がし、みんなを再び屋敷の奥へと誘導する。

「そんなものどうすんのよ!?」

「いいから早く扉を閉めて! ドアの下に詰めるんだ!」

「なるほどな。でも時間稼ぎにしかならねぇと思うぜ?」

「何もしないよりマシさ」

 閉めた扉の下にタオと二人がかりでカーテンを詰めると、僕達は大広間を目指し走り出した。

「あれがさっき言ってたヴィランね」

「うん、黒い霧から発生してきた闇の塊にしか見えなかったけど、倒してもまたすぐに復活するんだ」

「ちょっと面倒なことになったわね……」

「やっぱり僕達を狙ってきたのかな?」

「こう言っちゃなんですけど、多分違うと思いますよ」

「ああ、嫌な予感しかしねぇ。オレもシェインと同意見だ」



「エクス君、またアナタたちなの? 今度は許してあげないわよ!」

 大広間に戻ると、仁王立ちで腰に手をあて、小さな身体全体で憤慨を表現しているクレアが、階段の踊り場で僕達を見下ろしていた。

「ごめん説明は後! とにかく部屋を見回ってくるから二階で待ってて!」

「ちょっと、いきなりなんなのよ、もう!」

 みんなで示し合わせたように散開し、一階の各部屋を確認して回る。

 バスルームとトイレをチェックしに来た僕は、もうあまり猶予がないことを知った。

 排水口から黒い水のような闇が溢れ出し、徐々に水位が上がってきている。

 気休めにしかならないのは分かっているけど、それでもバスタオルやマットでドアの下に詰め物をし、その場を後にした。


 大広間へ戻ると時同じくしてみんなも戻ってきたが、その表情からあまり芳しくないことが見て取れる。

「厨房や勝手口はだめ、もう隙間から漏れ出してたわ」

「こっちもだ。倉庫と中庭もアウトだな」

「地下室へ降りる階段もやっぱり黒い水浸し〜、参ったね〜」

「使用人控室も応接室も駄目でした」

「僕の方も同じ」

「これじゃどこからヴィランが湧き出してもおかしくないわね」

「ねえ! いい加減説明してよ!」

 一人蚊帳の外にされているクレアがしびれを切らし、ヒステリックに僕達を責め立てる。

 僕が何から説明したらいいのか考えを巡らせていると、レイナが階段を上がりながら「私がする」と僕を制してきた。

 これから話そうとしていることは、年端もいかないクレアにとってショッキングな内容であることは間違いない。

 それどころかあまりに突飛な話過ぎて、まったく実感できない可能性の方が高いだろう。

 博士に話を通してもらう為にも、まずは彼女を説得しなければならない。

 そして冷酷な決断を迫る──この屋敷を捨てるか、命を捨てるかだ。


 僕の悪い癖。別に悪いことではないと思うけど、関わりを持った人の運命がどうしても放おっておけなくなってしまう。

 その結果がどうなるのか、事と次第によっては取り返しのつかないことになる場合もあると分かっていながら、どうしても見なかったことに出来ない。

 こういうのはやっぱり偽善て言うのだろうか?

 僕にはこんな重責を背負うことはまだ出来そうもなかった。

 覚悟──それが僕とレイナの決定的な違いなんだろう。

 レイナは自分や相手の決断に決して後悔しない。

 たとえ後悔があったとしても、それを全て受け止めるだけの覚悟が出来ている。

 時間的猶予があまりなさそうなこの状況で、これから何が起こるのか、果たしてクレアはこの事態を受け止められるのだろうか……


 階段を上りきった先の廊下で、レイナが必死になってクレアに説明をしていた。

 何も言えない僕は黙ってその様子を見守っていたけど、あまり話が上手く運んでいないようだった。

「だからね、この屋敷に危険が迫っているの」

「お父さんが作ったシステムがある限り平気よ! 今までもこれからも!」

「でももう屋敷の中にまで入り込まれてるわ」

「ふん、そんなのお父さんの手にかかればへっちゃらよ」

 終始苛つくクレアを宥めながら、レイナは努めて冷静に説明しようとする。

 父親への絶対の信頼に裏打ちされた言葉だろう。

 決して譲らないクレアに、流石のレイナも手を焼いているのが分かる。

「多分、そんなには持たないと思う」

「なんでそんなことが分かるの! アナタなんなの!?」

「昔ね、私の住んでいた想区も消滅したからなんとなく分かるのよ。お願いクレアちゃん、分かって」

「子供あつかいしないでよ、おばさん!」

「おば……! な、なんですって、この分からず屋! 私のどこがおばさんだって言うの!? お肌だってまだこんなにピチピチで髪も結構気を使ってお手入れしてるんだから!」

「姉御、ちょっと落ち着いて下さい。話が逸れてます」

「まーいきなりこんな話を聞かされたら混乱するのも仕方ないけどね〜」

「なぁ、これおまえが話したほうがいいんじゃねぇか?」

「え、僕が?」


 シェインに羽交い締めにされてもなおクレアに食ってかかろうとするのを辞めなかったレイナが、納得の行かない顔で僕を見る。

 自分で説明すると名乗り出た手前引くに引けない気持ちも分かるけど、今は一刻を争うからとタオ達に説得され渋々暴れるのを辞めた。

「お願いするわ……。私はちょっと頭を冷やしてくる」

 はてさて、僕にこの大役が務まるのだろうか? なんて悠長なことを言ってる場合ではない。

 下手したらクレアと博士の命に関わる。場合によっては僕達も。

 何としても説得しなければならない僕は、セイラのそばまで行くと目線を合わせるように身をかがめて、そっぽを向いている彼女にゆっくりとした口調で話しかけた。


「クレア、突然こんなこと言われたら誰だって混乱するよね。でもレイナの言ったことは本当なんだ。彼女が昔暮らしていた想区は消滅して、レイナだけが生き残ったんだって。その時死んでいく人達を前に、何もできなかった自分を今でも悔やんでる。だから尚更クレアたちには生き延びてほしくて、あんな言い方しちゃったんだと思う。そりゃ誰だって信じられないさ。運命の書に書かれていないことが自分の身に降りかかるとか急に言われてもね」

「そうよ、そんなこと書かれてないわ。運命の書にはワタシが10才になるとお母さんと同じ病気で死ぬとしか書かれてなかったもん」

「え!? 博士が研究した薬で治るって運命じゃないの?」

 僕はクレアの言葉の意味がすぐには理解できず、思わず顔を覗き込むように身を乗り出してしまった。

 何も書き込まれていない僕たちにとってはあまり馴染みはなくとも、運命の書とは言わば台本であり、同時に人生の予定表だ。

 運命の書に従い生きる人々にとって、それはあまりにも場違いで有り得ないこと。


 当の本人はさも当たり前のように言って退けたが、僕の態度がその不自然さを如実に表していたのかもしれない。

 クレアはすぐに矛盾点に気づいたようだった。

「あ……」

「今運命の書には何て書いてあるか分かる?」

「ううん、病気になってからもう死んじゃうんだと思ったから、その時から部屋に置きっぱなしよ」

「いったいどうなってんだ?」

「さぁ、シェインも初耳です」

「レイナは?」

「私も知らないわ。そもそも崩壊した想区の生き残り自体、今まで会ったこともないんだから」

「もしも〜し、とっても興味深い話だけど、今は急いだほうがいいんじゃないかな〜?」

 そうだった。何か引っかかるものがあるけど、今は謎解きなんかしてる場合じゃない。

「クレア、大事なことだからちゃんと答えてほしい。屋敷がこうなっちゃってから今までドアとか窓の隙間とかから、黒い霧や黒い水が入り込んできたことはある?」

「ワタシがベッドから一人で出歩けるようになってからは一度もないし、お父さんからもそんな話は聞いたことないわ」

「それじゃ、黒い嵐に襲われてから一度もないんだね?」

「だからそうだって言ってる──」

 それはクレアのイライラに呼応するように唐突に訪れた。

 地面から殴らたような衝撃が襲い、それからゆっくりと大きな周期で建物を揺らす。

 屋敷の外ではめちゃくちゃに鐘が鳴り響いている。

 僕は咄嗟にクレアを庇い、揺れが収まるのを待った。

「おう? 地震ですね」

「これはまずくないかな〜?」

「やべぇな、何が始まったんだ!?」


 すぐに揺れが収まり、覆い被さるように庇っていたクレアを抱き起こすと、さっきまでの剣幕が嘘のように怯え震えながら何事かブツブツと呟いている。

「みんな大丈夫?」

「そんな、うそよ……だってお父さんが作ったシステムは……」

「クレア、落ち着いて。もう猶予はあまりないと思うの。お願いだから博士に会わせてちょうだい」

「それじゃ、さっきの話って……」

「ええ、そうよ。この屋敷もじきに闇に飲まれるんじゃないかしら……」

 レイナの言葉に絶句したクレアもようやく事態が飲み込めたようで、なんとか気丈に振る舞っているがその小さな身体が僅かに震えているのが分かった。

「お父さんは研究室?」

「……違うわ、ずっと書斎にこもって研究してるの。何を調べてるのか教えてくれないし、ワタシには入るなって」

「わかった、とにかく急ごう。案内して」

「うん。こっち」

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