三十一文字のうつくしさ。

レビューを頂いたことから作者様の存在を知り、こちらの作品集を拝読させていただきました。

短歌や俳句など、限られた文字数で想いを表現するというのは大変技量のいることだと思っています。自分で創ってみようと向かってみても、稚拙な一句を詠むだけで大層苦心します。
そうしてみると、この作品集の数は、種類は、工夫は、なんと素晴らしいものでしょうか。
作品名にもなっている「ゆうしゃのぼうけん」の句だけを読んだ時には、「くすりと笑える句が集まっているのかな」と思いました。しかしそうじゃない、それだけじゃない。ゆうしゃの句だって、同ページの句を目にした後では受ける印象が変わります。
率直な言葉で綴られる現実の世界、美しい言葉で綴られる夢想の世界は、それを表しているのがたった三十一文字だということを忘れてしまうほどに読者の脳裏に大きく広がっていきます。

どれも甲乙つけがたいのですが、特に心に残った句として、

一言で崩れてしまうトランプのお城の上でみんなで踊ろ
春浅く冷たき日にも光あり伸びゆきたまへ泥中の蓮

の二つを挙げさせていただきます。

うう、もっと読みたいです。続編希望。

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