第17話 なんとかしてみるは・・・

 海面から出た際に確認できた内容、アクティブソナーで解析できた海中の状況から、被害最小になるだろうと思えたのは、船着き場とも材料置き場ともいえるそんな風に見受けられる場所が一番マシだろうと判断し、微調整という名の誘導を開始する。


 その際に、そっちじゃないこっちだ、とばかりに左腕のワイヤーを巻き上げかつ両足を無理やりに動かし、推力方向を変えての方向制御を行いながら移動させているのだが、これがなかなかに厄介だったりする。


 この突き刺さっている状態から抜け出せればと一度は奮闘したけれど、いまさらながらに気づくというか、まるでカエリがあるかの様に抜けないというね。


 それに踏まえ、足場という物が無い踏ん張りがきかない場所での悪戦苦闘に、気づけば活動エネルギーの量が昨日摂取して増やした分が丸々半分以上が消費されてる状態にまで減ってきており、何気に結構使ってる状況で少々焦りだし始めた。



 このまま消費し続けて、あの石を見つけ出せずに採用がおじゃんになったら、賃金を獲得できなくなってしまう。

 夕刻という事は日没だとは思うが、それまでという条件から、現時刻を確認すればまだ間に合うべき時間ではあるが、見つけた際にマーカーを付ける余裕がなかったので、あの周辺を再度探索しなければならない時間がかかるよなぁと

 そんな嫌なことを想定していた折、MAP上での目標地点としていた目安の場所へと近づいていた事に確認が取れた。



(さてと、それじゃぁ本腰いれますかね。)



 そんな思い胸に、陸地へと進行する為に推進器を一杯までぶん回す。

 正直、これで突き刺さった部分が引き抜ければと思たが、なかなかに引っかかって簡単に抜けてくれない。そのおかげもあってか相手を引っ張る形にはなるのだが、消費エネルギーが半端ないくらい減り始めているのがわかる。


 想定はしていたが、先に無くなってしまうのは勘弁願いたい。

 なんとかゲージが無くなる前に、陸揚げしてしまえばあとは何とでもなるはずと、加速がついた状態の後、その勢いを維持したまま、すんでのところで陸上に向かって、「飛び上がれぇぇぇ!!」と、無理やり空中へと飛び出



(って、高度たりねぇ!つ-か、こいつ何気に何気に重っ!!)



 すかさずワイヤーを強制巻き上げつつ、勢いを確保して陸地へと…着地というか見事縁に衝突し、たぶんバウンドするかの様にそのまま地上へと転がり落ちてるみたいである。

 いや、自分の身体がどうなってるかなんてわからんが、たぶんそんな感じ。


 なにせ画面上に上がる身体のいたるところから警告マークが浮かび上がるし、視界がグルングルンと目まぐるしく回るし、ようやく回転が止まったと思えば倉庫の中ともいえる所まで転がり移動したってところだな。


 ようやく地上かと思いながら立ち上がっては、倉庫入り口の方を見てみると、キモイ顔つきの物体が、こちらに大口開けながら、ビタンビタンという形でのたうち回っていたりする。


 うわぁ・・・なんか陸に上がると、さらにきめぇ・・・


 あのグロテスクな表情?みたいなのが、こうビタンビタンとのた打ちまわっており、入り口の扉とか何気に破砕されていたりし、さらに相手の状況みてみれば、目算でも全長4,5mぐらいあるのではなかろうか。大きく存在を主張している背びれなんかも光沢がなんか紫色っぽくもあり、とてもとても怪しい色がさらにキモさを醸し出してきてくれる。そして、その存在が一番の気持ち悪いというののをだしてるのは、大口ひらけた中に口がもう一つあるというのが、バクバクと閉じたり開いたりしてる姿と、さらにその開閉している口が何か粘液みたいな物で糸を引いてるのみてるという。もうどこかのSFホラー的な映画にでてきそうな、中から小さな口が飛び出してきそうな、そんなキモッ!コワッ!というレベルである。VRMMOでも、ここまでキモイ敵キャラなんて出てこなかったぞ?あとは、頭部みたいな部分は、さっきまで刺さっていた角?みたいなのが根元からポッキリ折れて・・・あぁ、自分の体に突き刺さったままになっているのか。


 というか、何かもうビタンビタンとのたうち回ってるのがとてもウザいと感じてきたので、腹に刺さってた角?みたいなのを右腕で無理やり押し込んで抜いてみると、やはりカエリがついている構造で、これは引っ張ってもとれない訳だと感心しながらも、そのままいまだにビタンビタンと自己主張してくるキモいカジキマグロモドキの脳天にズブリと思い切り突き刺してやると、ようやくおとなしくなってくれた。


 結構簡単に突き刺さった事に少々驚いたが、それよりもさっきから身体の損傷警告表示が左腕の損傷を…って左腕?



 うわぁお…。その場所を見て驚いた。

 なにせ肘間接から下に関節がもう一つ増えていた。



 しかも射出ワイヤー部も、根元から引きちぎられて中身がそこからボコッっと出てる状況だし、どんだけの衝撃だったんだろうか。これだから2ndキャラはネタキャラすぎて脆すぎんだな。

 あと、こういうひどい惨状なのに、痛みが無いってのはVRMMO的で楽だけど‥‥‥無いなら無いで、ちょっと問題かもしらないか。なにせHPバーが表示されなくなっているし、そうなってくると、身体のステータス表示を常時表示させとくべきかもしれない。

 というか、この折れてる状態でも動けれるのってのは、痛みが無い為ともいえるから、正直アリなんだかナシなんだか。まぁ、ロボというのはボロボロになりながらも動く姿は、うむ、様になるしアリだな。アリ。


 そう思いながら、無理やり関節が逆関節風に一つ増えている左腕を、右腕つかって定位置に無理矢理戻してやるが、なんか感触的に遊びがありすぎるかな?という感覚レベルで、グーパーとしても一応は動作するし、ワイヤー部分も一応内部に無理矢理おしこめて入った状態でも、動かないわけでもないからまぁいいかと思っていたら。



「嬢ちゃん!無事か!!」

「ってぇ、やっぱこれ、ガーランだよな?」

「しかも、大級じゃねーか…」

「マヂかよ…」

「ってっ、うぉぉぉ…」

「すげぇ……でけぇ…」

「たまんねぇな…」



 倉庫建屋の入り口から、ガタイの良い生物ナマモノ集団と、天然記念物な頑固親方がぞくぞくと登場してくる。その各々には大小様々な銛を持ってきてはいた。が、最後の数人は、何故かこちらを見ながら興奮していた。



「えっ?まぁ、まぁ無事ですけど?」

「そ、そうか…」



 そういいながら、親方は倉庫の隅から布を取り出しては自分へと被せてきた



「とりあえずだ、それでも羽織ってろ。で、お前ら、回れ右だ!」

「へいへーい」

「眼福眼福~」

「ごっそうさんでしたー」



 視線を体へ落としてみると、あぁ‥‥‥なるほど、ウェットスーツアーマーの胸部の出っ張りに引っ張られている部分が破れて、肌がまともに見えてしまってたわけだ。納得。

 ネタで作った作り物だし、生物ナマモノにどう見られようとも、制作技術の腕を褒められてるぐらいで、他には気にはならないのだが…まぁいいか。



 そんな天然記念物親方がこちらを見た後に、すぐさまさっきのキモイ魚類へと向き直る。



「大系のガーランか。おい、ハンターギルドへ依頼だしてこい。まだ周辺海域に仲間がいるかもしれん。あとは港湾管理にも連絡回しとけ」

「はい、わかりました。ではさっそく」

 

 そういって、今日最初にあっていた助手と言っていた人がその場を速足で出ていった。



「さてと、嬢ちゃん」

「はい?」

「いきさつを話してくれるか?これでもここらの管理を任されてるからな」

「は、はぁ・・・」



 いきさつも何も、あの石を探してたら襲われたとしか。あとは専用の道具を使って陸にまで連れてきたと、あの角みたいなのを刺して動きを止めたという所だけ話していく。



「ま、大体解った。でだ、身体の方は本当に無事なんだろうな?」

「無事ですよ?」



 すごみと共に上から下へと眺めながらこちらに聞いてくる威圧が、なんともはやすごかったので、その場で屈伸なり、手を動かしてぐーぱーしてみたりとやっているが、その間、かなりすごみというか睨みを効かされていたりしていたが



「もぅいい」



 という一言で終わった。

 いや、心配してくれていたんですかね?それとも何か思う所があったんですかね?なんというか、表情が読み取りずらくて、何を考えているのかサッパリなんですが…



「親方!ガーランの解体終わりました!」

「こいつはどうします?」


 と、掲げられていたのは、刺さってたあの角らしきもの。


「やっぱり回しますか?」

「・・・ああ、そうしろ。掟に従え」

「へーい」



 回す?掟?なんだそれ?

 そんな彼らだけの単語とやりとりで、なんか自分がほっとかれている気がしないでもないが……


「でだ、嬢ちゃん、あのガーランをどうする?」

「どうする…とは?」


 何を意図して言っているのかわからない。とりあえず食材にでもできるのだろうか?などと思っていたら



「ガーランの素材をハンターギルドに持っていけば換金できますよ?」



 と、いつの間にか戻ってきた助手の方が、横から話を振り出してきた。その際に「手続きはやっておきました。後で管理官が来るそうです」「ちっ、あいつ直々か?」「そうみたいですね」「ハァ…解った」という、何かとんでもなくいやそうな会話が聞こえてきたみたいなんですが…

 というか


「ハンターギルド?」

「ええ、こういった魔物の狩猟や採取を主として取集いるギルドですよ。

 あのガーランの肉なら高値がつくでしょうね。

 他にもあの背びれや骨なども薬の材料になりますが、

 薬師ギルドに持ち込む手続きを個人でやるとかなり面倒なので、

 ハンターギルドで一括して対応した方が手間が省けるでしょうね」



 眼鏡をクイッという仕草つきで、懇切丁寧に説明してくれる助手の人。

 なるほど、つまりあのガーランという魔物?の素材は、お約束的なハンターギルドで材料として売却ができるという事ね…というか、そういう狩猟を執り行っているギルドがあるなんて知らなかったし…

 というか、高値が付く肉って事は…うまいという話なのかね?やっぱそうだよな希少とかありそう。という事は食ってみたらエネルギー回復量も増える可能性があるのかもしれない。それならば、とっておいた方が良いだろうしいや、食えると確定できたわけじゃない、薬師ギルドといっていたから、もしかしたら触媒という可能性も・・・確認をとっておくべきだろう。



「えーっと、あの肉は食用になるんですか?」

「えっ?食用も何も、高級食材ですよ?」



 マヂでか


「背びれの毒が回る前にやっといたから大量だぜ!」

「もったいねーもんな!」

「手間賃として、ちょぉと分けてくれればOKだぜ!」

「オレ、肝でいいぞ!」

「まて、そこはまて!」

「うるせーぞ!手前ら!」

「「「ウーッス!」」」


 そういう言葉が発せられた場所では、解体がおわり、着々とブロック肉化したものを荷台へと積まれていく元魔物の存在があった。



「あれの所有は?」

「ええっと、狩猟を行った人の所有物になりますね。

 状態も良いですから、たぶんかなりの高値がつく部類になりますかね、

 街の肉屋にでも持っていけば喜ばれるかもしれませんよ?」



 金銭にするか、食材にするか…悩みどころである。

 うーん、うーん…



「鍋にしようぜ!鍋!」

「ばっか、焼きだろ?常識的に考えて」

「揚げだろうが、あの小麦粉をまぶして揚がるジューシーな肉…最高だぜ」

「最近でたワサビジョーユで生とかもいけるらしいぞ」

「「「生はちょっと…」」」

「なんでだよ!うめーだろー!」

「てめぇらいい加減にしろ!その獲物は嬢ちゃんのだろうが!」

「「「ウッス、スイヤセンデシタ」」」



 なんか、野次を飛ばしてる人たちから、旨そうな誘惑がヒシヒシと・・・鍋に揚げに焼きにと・・・あ、あかん、なんか旨そうなフレーズに…

 そんな中、腕を組みながら怒鳴りつけてたりする親方が一人。

 ある意味シュールな光景だな。

 考えても仕方ない。とりあえず食料補給による回復が重要だろう。なにせ一杯までぶん回したおかげか、もう四分の一を切ってしまっている。


「食材にならない物は売却で、あとは食材として宿に持っていこうかと、

 あと解体のお礼に一部は持って行ってもよいかと」

「わかった。お前ら!聞いたな!」

「「「うーっす!」」」

「肝貰い!!」

「バッ!てめぇ!そこはオレも目をつけてたんだぞ!」

「こればっかりは早いモノ勝ち!」

「大量にある肉だけにしておけ!バカやろう共が!!」

「「「え、えぇぇぇぇ」」」


 と、いきなり争奪戦が始まったりするが、親方の一括で収まる。

 親方、何気に慕われてるのか、それとも恐怖にかられているのか…



「気にしないでください。いつものことですから。

 それで、どの宿でしょう?」

「えーっと、宿…?」


 やっべ、宿の名前忘れてたわ。何気にスルーしてたわ、いかつい親父さんに、ふくよかな女将さんと、よく働く一人娘がいて、馬房がある三階建てのと説明すると。「ああ、ギルの宿か」と理解はしてくれた。その後はトントン拍子というか、その宿への搬送とハンターギルドへの売却手続きはやっておきますよと助手の方が告げてくれた。


 その後は、検分という事で、親方はここに残るとの事となり、その際「あいつ等にも料理するなら少し分けてやってくれるか?代金は払う」という事で話を振ってきたが、それを受けるよりも貸しを作っておいた方が良いかなぁという魂胆を思いつつも、「別に代金はいりませんよ。それよりも…」と、何気に雇ってくれとワイロ的な物をと伝えてみたところ、どう受け止めた繰れるのか解らないまましばし沈黙がながれる。


 その後、腕を組んで悩んでいた親方が、



「嬢ちゃん…」

「はい?」

「明日、気が向いたら来い」

「えっ?」



 と言うだけいった親方は、プイッという感じで視線をそらしていた。

 これはあれか?採用されたという事か?石見つけなくてよいの?と思っていたりしていたが、それとは別に周りでは



「お、おぉ親方がデレた…」「デレたな…」「珍しい…」「かなり珍しいですね」

「てめぇら!!今日は終いだが、明日はおぼえておけよ!」

「「「へーい!」」」「「少しは勘弁してくださいよー」」



「知るか!さっさと行って来い!」




 親方は茶化されいながらも、少し笑っていた。



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